あらすじ
ある山に鬼が住んでいた。
この鬼ときたら、気が向いてはふもとの村々を荒らしまわってはみんなを困らせていた。
あるとき、夜に、ふもとの村々の明かりが灯るのを見て、鬼は一人が退屈だと感じた。
そこで、鬼は、嫁を貰うことを決心したのだった。
早速次の日、鬼はふもとの村まで行って、嫁にするから村一番のおなごを差し出せと要求した。
困ったのは村人たちだ。誰も鬼の嫁になんかなりたくないしさせたくない。
だが、そのとき、一人のでっかいおなごが、自ら進んで、嫁になると言った。
このおなご、村一番の腕っ節の強い娘だという。
鬼は、山の暮らしには頑丈な嫁がいいだろうと、この娘を連れて帰ったのだが……。
タイトルそのままの強い嫁さん
表紙の、送り犬にのなんともいえない情けない顔が目を引いて仕方ない一冊。
タイトルからして、強いお嫁さんに困り果てているのだろうなぁと安易に想像できる。
暴れん坊のおには、気が向いてはあちこちの村で暴れてはみんなを困らせ、恐れられていた。
好き放題をしていた鬼だが、ふとした気の迷いか、夜に村の明かりが見えて、急に一人が退屈に思えた。
そうして、彼は思いつくのである。
嫁を貰おう、と。
安易な思いつきに、大丈夫か?と心配になるが、そこは鬼。
彼は、まったく安易にこう考えていた。
「よめを もらって、めしたき させよう。
いうこと きかなきゃ、ぶんなぐってやる」
とんでもなくとんでもない理論である。だが、鬼の計画は、そんなにうまく行くものではなかったのだ……。
ふもとの村に行き、村一番のおなごを嫁によこせという鬼。
まだ畑を荒らしていてくれたほうがマシであった。村人達は、あんな鬼のところにおなごを嫁に行かせたくない。
しかし、そこに現れたのはでっかいむすめ、とら。
何を思ったのか、彼女は自ら、鬼の嫁になると申し出た。
何せ、鬼に比べて表情が乏しいため、彼女が何を考えているのか分からない。だが、でっかい。老人二人分の太さがある。
失礼ながら、お顔のほうは朴訥なお顔をしている。
彼女を見て、鬼は首をひねった。
これが村一番の娘?
とらは言う。
「うでっぷしなら むらいちばん」
鬼は多分、村一番といっても腕っ節はあんまり求めてなかったんじゃないかなあと思うのだが、鬼は山の暮らしには頑丈な娘がいいだろうと、彼女をつれて返ることにした。
それが、鬼にとっての災難の始まりだとは知らずに……。
このとら、飯炊き洗濯が大の苦手。飯炊き洗濯というより家事全般が苦手そうだ。
そんな話は聞いてない、と鬼はとらに掴みかかった。
すると……
嫁、鬼をぶっとばした。
「あらあ、わるかったっけよう。
おめえが こんなに かんたんに
ぶっとぶなんて」
こう言われたら、鬼は立つ瀬がない。このとき、ようやく、鬼は自分の誤算に気づいたのであった。
もしかして鬼、頭のほうはあまり回らないのかもしれない。
鬼は仕方なく炊事家事全般を担うことに。
嫁さん、本当に食べて寝てばかりである。
すっかり あてが はずれた。
こんな はずでは なかった……。
困りきった鬼の姿がなんとも哀愁漂っている。まあ、従わなかったら殴って言うことを聞かせるなどととんでもないことを言っていた罰である。自分の考えの浅さを散々悔いるといい。
これではたまらんと、とらを村に返しに行くことに決めた鬼。
その道中で、二人は、大きな大きなクマに出会う。
ここぞとばかりに強さを見せ付けようとした鬼は、木の枝を武器にクマに立ち向かっていくのだが……
鬼、クマに負けた。
本当にもって、鬼、いいところなしである。
情けなくも、木に登ってくまから逃げる始末。
しかし初めて、鬼の口から、こんな言葉が飛び出る。
「た、たすけ……いや、なんでもねえ。
おめえは はやく にげろおっ!」
初めてとらを思いやった言葉である。どんなに家事炊事をやらない食っちゃ寝の嫁でも、情が出てきたのだろう。やせ我慢が実に男らしくてかっこよく映る。……クマに追い詰められて木の上から叫んでいるところは、到底男らしいとはいえないが。
しかし、ここは腕っ節の強い嫁さんである。
想像通りに、でっかいクマを投げ飛ばしてしまう。
嫁、クマ撃退!!
そして、腰が抜けて歩けない鬼をおんぶして、家に帰るのであった……。
……嫁さんがかっこよすぎて、鬼の暴れん坊の設定がかすんで見える。
しかし、鬼は読めさんにおぶわれながら、きっと心の中でこの規格外のとらに心を許したのだろう。
交わす会話に、情がこもっているのを感じられる。
「おめえが いなかったら、
わしゃ おっちんでた とこだったなあ」
とらは わらった。
「なあに、おめえを たすけなきゃと
むちゅうだったのさ」
おには ほおっと めをつぶった。
このとき、初めて二人は支えあい、助け合う夫婦になれたのかもしれない。
お互いを思いやる気持ちをもてたのだから。
男の役割、女の役割を超えて、仲睦まじくできるのであれば、それが一番いい形なのだろうと思う。
感情豊かな鬼がなんともユーモラスに描かれる
怖い鬼かと思いきや、嫁をもらったところでだんだんユーモラスになっていく鬼。
情けなく描かれすぎて、ちょっと可哀想な気もしてくるが、最後は二人が幸せそうだからいいことなのかもしれない。
鬼は愛嬌のあるデザインだし、嫁さんはマイペースな感じで面白いのだが、いかんせん全体的に落ち着いた色味で鮮やかさがなく、子どもたちが自ら手に取ることが少なそうだ。
読み聞かせしてあげると、お話の面白さに気づくかもしれない。
対象は低学年から。
お話がメインの絵本である。
