『本当はわりと残酷だった三匹のこぶた』

  • ISBN:978-4834000979

絵本『三びきのこぶた』を読んだので、今日は、『三びきのこぶた』について調べてみました。

わりと有名な話なので、原話に近い形をすでにご存知の方もたくさんいらっしゃると思うのですが、n番煎じということでご笑覧。

 

そもそも「三匹のこぶた」って誰が書いたの?

「三匹のこぶた」は、イギリスに伝わる民間伝承だったようです。
だから作者は分かりません。再話して、出版されたのが18世紀後半までにさかのぼるようですが、お話自体はもっと古くから語り継がれてきていたのでしょう。

 

みんなが知ってる三匹のこぶたってどんなもの?

「三匹のこぶた」といえば、兄弟ブタがそれぞれ家を出て、一人暮らしをはじめようとするところから始まりますよね。
小さい頃読んだ「三匹のこぶた」では、穏やかな様子で実家を出て行っていたと思ったのですが、原本に近いこの『三びきのこぶた』は違います。

おかあさんぶたは びんぼうで、
こどもたちを そだてきれなく
なって、じぶんで くらして
いくように、三びきを
よそにだしました。

ワーオ。深刻な経済的事情により、三人兄弟は家を追い出されたのですね……。
何だか、当時のイギリスの家庭の経済状況を見るようです。多分、こうやって子どもを余所に出すことは頻繁にあったのかな、などとも思います。

そしておなじみ、上の兄さんはわらで家を作り、二番目の兄さんは木で家を作り、末の子はレンガで家を作り……
そこにオオカミがやってきて、わらの家と木の家は吹き飛ばされてしまうけど、レンガの家は無事だった。上二人のお兄さんぶたは、レンガの家に投げ込み、オオカミから身を守れた。そして幸せに三匹で暮らしましたとさ。めでたしめでたし。

……という展開が結構知られているのではと思うのですが、この原話に近い『三びきのこぶた』は違います。

まずわらで家を作ったぶたは、オオカミに家を吹き飛ばされて、食べられてしまうのです。
ええ本当に、食べられます。赤ずきんのように、おなかを裂いて助かる、などという救済案はありません。
わら家のこぶた、ここで完全に退場します。二度と出てきません。

次に木の枝で家を作ったこぶた。彼もオオカミに家を吹き飛ばされ、食べられます。本当に食べられます。
もう二度と出てきません。

じゃあレンガ家のぶたは……?というと、ここからがお話の本番なのです。

レンガ家のこぶた、オオカミの息にも吹き飛ばない家を作ったので、命は助かります。
しかし、ぶたを食べてやりたいオオカミは、一計を案じて、いいかぶ畑があるから一緒に行かないか、とこぶたを誘います。こぶたは、行くよ、と返事をします。オオカミとこぶたは6時に時間を取り決めますが、オオカミの悪巧みを見抜いているこぶたは、5時にこっそりかぶの収穫を済ませてしまうのです。
それを聞いたオオカミは大激怒。じゃあ今度は……とその後もリンゴを取りに行かないかだの、お祭りに行かないかだのと誘っては、こぶたに先を越されたり機転を利かされて、オオカミはこぶたを食べる機会を逃してしまうのです。
これはオオカミが間抜けというより、こぶたのほうが賢いように思います。

もうカンカンに怒ったオオカミは、レンガの家の煙突から侵入してやって食べてやるといいます。
それを聞いたこぶたは、大鍋に水を張り、暖炉の火にかけました。そして煙突から落ちてきたオオカミは、大鍋にドボン。そこにさっと蓋をして、オオカミをことこと煮て、こぶたはオオカミを食べてしまうのです。
こぶたが、オオカミを!

そして幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。

いかがでしたか?
ご存知の「三匹のこぶた」と相違ありませんでしたか?

 

どちらのお話を子どもたちに伝えるべきか

原話に近いほうは、食べて食べられの残酷な話です。
一方、兄弟ぶたが助かるほうは、誰も死なないお話になっています。
どちらを子どもたちに読ませるか……?
それは周囲のおとなの判断に任せざるを得ないわけですが、こういう話も伝わっているということを知っていると取捨選択の幅が広がっていいのではないかと思います。

しかし、「三匹のこぶた」というのに、三匹もこぶたが登場するのは最初だけで、最後はレンガの家のこぶたの独壇場ですね。
ちなみに、原話に近いほうは、わらの家と木の家のこぶたが「兄」であるとは書かれていません。