あらすじ
ビリーという男の子がいました。
ビリーのお父さんは、ビリーが喜ぶようなことをしてあげたり、やってあげたりしますが、ビリーはいつもこう言いました。
「だから？」
ちっとも喜ばず、何をしてあげても「だから？」と言うビリー。
最後は……。
衝撃のラストで話題になった一冊。
「だから？」の持つ、人間関係を破壊する力
昔、怖い絵本やトラウマ絵本などが取りざたされていたころに、日本のテレビにもとりあげられたことのあるこの一冊。ご存じの方も多いのではないでしょうか。
その当時は、この絵本を知っているどころか、存在さえ知らなかったのですが、今回、思い出したかのように手にとって見ました。
……うん、最高に皮肉が利いている。
「イギリスBCCBブルーリボン絵本賞受賞！」……だから？
見返しにまでやらなくても……。こういうの、好きですけど！
なんというか、日本ではまずこんな絵本は出ないだろうなあ、というのが最初の感想。
絵本は、おとなから子どもに与えられることが多いから、ついつい、中身やタイトルまでにも神経質になることが多い。
人それぞれ、これはダメだろう、ここまでは大丈夫だろう、というラインが違うから、絵本一冊を巡って、おとなが論争を引き起こしたりして。
まあ、そんなのは、一個人の意見にすぎないし他にもいろんな意見がありますよね、で済む話といえばそうなんですが、インターネットが浸透すると謎の論客みたいなのが出てきて……
……話がそれました。
そういうわけで、こういう、『だから？』みたいな、とがった絵本はそうそう日本では出ないだろうなあということを言いたいのでした。
確かに、内容は過激。
でも、この絵本の意図することはわからなくもない。
この絵本では、男の子がお父さんに何をしてもらっても、「だから？」としか言わない。表情も変わらない。
言葉悪くいえば、ムカつきますよね。
べつに、やってほしいと言われてやってあげたことじゃないけど、喜ぶと思ってやってあげたことが、「だから？」の一言で無意味になってしまう。
「だから？」
「で？」
「別に」
考えればまだまだありそうだけど、これらはコミュニケーションを頭から否定する力を持っています。
「だから？」と思うことも、生きているうちなら何度も遭遇することですが、たいていの人はそこで取り繕って、喜んでいるそぶりをしたり、愛想笑いを浮かべたりします。
それは自分のために嘘をついているということではなくて、相手を傷つけないようにする嘘なのです。または、嘘をついたほうが、後々状況がよくなるのでつく嘘なのです。昔の人はよく言いました。嘘も方便、というやつです。
「だから？」を続けた男の子は、かなりパンチのきいた結末を招きました。最高に皮肉な終わり方です。
私はこの終わり方が嫌いではありません。
何か事情があるのならまだしも、結局のところ、相手の気持ちを思いやらず、傷つけ続けたその行動が招いた結果なのですから。
ねえねえ、ちょっと聞きたいんですけど、その中からお父さんに「だから？」と返された気持ちはいかがですか？
話はシンプルで分かりやすいが
話はいたってシンプルで、文章の量もとても少ないのですが、内容が内容なだけに、高学年、ティーンズ向けでしょう。
意図を正しく伝えれば、低学年でも理解してくれるかも。
幼児にはこの本の意図するところが理解しづらいと思われる上、衝撃的な結末ばかりが印象に残ってしまい、トラウマ絵本となってしまう可能性もあります。
幼児への読み聞かせ……は、あまりおすすめできないかなあ、やっぱり。
