あらすじ
あるところに、貧乏な王女様がいました。
王女様は、王様と、猫の三人で暮らしていました。
ある日、隣国から、舞踏会の招待状が届きます。
その舞踏会の参加者から、王子様はお后を選ぶとのこと。
王子と結婚するつもりはありませんでしたが、王女は踊ることが好きだったので、舞踏会に参加したいと思いました。
しかし、舞踏会に行くには、ドレスが必要です。
取り出したドレスは虫食いだらけ……。これでは、舞踏会に行けません。
王女は、王様に相談しに行きましたが、ドレスを買うお金はありませんでした。
王様は空を飛ぶ機械を発明するのに夢中で、次の土曜にテスト飛行を披露する予定でした。その後に、お茶会をしようと言う王様。
舞踏会をあきらめ、王女はお茶会の準備を始めます。
荒れ果てた庭をきれいにするため、王女は庭師募集の看板を出しました。
そこへ、一人の男が城を訪れましたが……。
貧乏な王女様が出てくる、童話風の絵本
きらきらと反射する葉々と、茂み、ドレスのパール。
手をつなぎ、見つめ合うドレスの女性と猫、男性。
まるでおとぎ話のような表紙です。
タイトルの通りに、主人公の王女は、お金を持っていません。王女がお金を持っていないというか、おうち自体が貧乏なのです。
雨が降るとお城は雨漏りし、ドレスはつぎはぎだらけ……朝ご飯のトーストもないので、朝ご飯は抜き……。
こんな暮らしぶりなのに、王女はグチるでもなく、貧乏は貧乏と受け入れて、自分でできる家事や掃除をしています。貧乏だから、召使いもメイドもいません。
童話でイメージする王女様と違って、この王女は貧乏ながらもたくましく生きています。
隣国から舞踏会の招待状をもらって、踊りに行きたいと願うも、ドレスを工面できなかったので、仕方ないと受け入れます。それに王女は踊りたいというだけで、舞踏会の目的であるお后選びにはあまり興味がない様子。王子は命令するだけだし、ろくでもないものだという考えを持っています。
ろくでもないといえば、王女のお父さん、王様だと思うんですけどね。
この王様、空を飛ぶ機械を作るのに夢中で、テスト飛行がてらのお茶会も勝手に決めちゃう。何も準備もできていないのに。
……というか、お金がないのは、王様の発明のせいなのでは……?
王女「ドレスが虫食いだらけなので舞踏会にいくための新しいドレスを買いたい」
王「有り金全部発明につぎ込んじゃったごめん。でも大丈夫空飛ぶ機械を発明したら大金持ちになれるから」
いやいやいや王様、ちょっと待とうよ。
これまでにもいっぱい発明失敗してる前歴があるらしいので、何が大丈夫なのか全く根拠がないよ。
くすくす笑いながら、大丈夫大金持ちになれる、と話す王様がちょっと心配になってきます。
王「そういえば土曜日の午後、テスト飛行するから国民みんなに見に来いって言ってたんだった。ついでにその後、庭園でお茶会しよう」
王様ーーー!
うちにはお金がないんですよ!?
有り金全部使っちゃったって自分で言ってましたよね!?
どこをどうやったら、「お茶会をしよう」という発想になるの……?
王様が、国民のみんなをテスト飛行を見に来るように伝えたせいで、王女はその準備に大忙し。なにせ、召使いもメイドもいないので、お茶会の準備も全部王女がしなければならないのです。
王様は自分の発明に夢中なのか、手伝いにこない。
「(お茶会には)カップケーキがいいだろうね」じゃないよ!
それでもけなげにお茶会の準備を始める王女。
なんだかなあ……という気分になってきます。
でもその無計画なお茶会のおかげで、後にハッピーエンドにつながっていくのですが、なんだか王様があんまりにものんきというか、自分勝手すぎてしっくりこない。
文句もグチも言わずにお茶会の準備を始める王女は一見すると昔風の理想の女性像のよう。しかし、それにしては妙に現実的なところがあって、王女に感情移入するのが難しい。
庭師だと思っていた男には言いたいことを言うのに、王様が庭師に褒美をとらせる段になったら、褒美には(自分を)結婚させてはどうか、と耳打ちするところなど、なんだかなあ……という場面が目に付きます。
終盤、プロポーズするくだりもなんだか回りくどく、何が言いたいのかよく伝わってきません。
たぶん、この本のテーマは、王子や王女の肩書きで結婚するのではなく、中身が好きになったのだから結婚するのだ、ということなのだと思いますが、会話のやりとりがややこしくなっていて、今一つ、ハッピーエンドに浸れないのが残念なところ。
正直、お話の内容全体がわかりにくく、童話風だけど童話のようには分かりやすくありません。貧乏な王女様、という設定は目を引くだけに、残念。
絵はすばらしく、見事に童話風で表現しています。
シルエットで描かれた絵など、とてもおしゃれでメルヘンチック。
つぎはぎだらけの王女のドレスも、なんだかとてもおしゃれに見えるほど。華やかで鮮やかなページはどこをとってもおしゃれで女の子の見る夢のようです。
頭身が高い絵柄は、おとなの女性に好まれる画風でもあるでしょう。
繊細で美しい絵が本当にすばらしい一冊です。
読み聞かせにはやや不向きな長文が多め
対象は低学年、中学年の女の子でしょう。
画風からして、おとなの女性向けともいえるかもしれませんが、内容的に共感を得るものではなく、また励まされるような向きではありません。
一文が長めで、読み聞かせするには少し難しいでしょう。
絵はとても美しく、可憐なので、見ているだけでも童話風の世界に浸れます。
