真夜中、ともだちがやってきて、窓をノックする。
ゆうれいのまちに行こうって。
ともだちに連れられて、足を踏み入れたゆうれいのまち
真夜中、友達に「ゆうれいのまち」に行こうと誘われて、「ぼく」は家を抜け出し、「ゆうれいのまち」へ。
最初は誰もいない町でしたが、そっとしずかに建物のかげを覗いたら、見るも恐ろしい姿の幽霊がいました。
幽霊に見つかって、「ぼく」と友達はつかまらないように逃げ出します。
追いかけてくる幽霊。
友達はぐんぐん先へ逃げていきます。逃げ遅れた「ぼく」は、ついに幽霊につかまってしまいました。
それから「ぼく」は、「ゆうれいのまち」で暮らし始めました……。
忘れてしまうという怖さ
「ゆうれいのまち」で暮らし始めた「ぼく」は、だんだん今までの事を忘れていきます。最初はさえない顔をしていた「ぼく」が、しだいに慣れて、ゆうれいたちと楽しく過ごしている場面は、幸せそうに見えます。
ときどき だれかが
ぼくを よんでいるような きがした
でももう思い出せない。何もかも忘れていく。
「ゆうれいのまち」に来る前のことはすべて忘れてしまう……でも「ぼく」は忘れることにすら危機感を覚えないぐらいに、いろんなことを忘れてしまったのです。
「ゆうれいのまち」とは死後の世界……? もしそうなら、ゆうれいの食べ物を口にしてしまった「ぼく」はもう帰れないさだめにあるのかも……?
ゆっくりとした恐怖が、圧倒的な画で迫ってきます。
勢いのある筆遣いで描かれた幽霊たち。雰囲気。無機質なコラージュで表現される「ゆうれいのまち」。つかまってしまった場面が何だかとても怖かった。
そうして最後に、またこの物語は繰り返すのかと思うと……。
ぼんやりとした怖さを描いた絵本
なんともいえない不思議で不気味な雰囲気を漂わせたこの一冊は、衝撃的な恐怖こそないものの、ぼんやりとした不安な気持ちを味わうことができます。
当たり前に持っている日常の記憶が、無自覚の内に失われていくのは怖いですよね。
この作品は解釈の幅が広く、そもそも「ぼく」はどうなったのか、友達とは何なのか、「ゆうれいのまち」とは何を暗喩しているのか、考察を重ねる楽しみ方もできます。
特徴的なタッチで描かれる「ゆうれいのまち」はとてもおどろおどろしく、その勢いに気おされます。
話自体には衝撃的な表現はないものの、読後、不条理エンドレスホラーを見たかのような気分になるのは、絵の持つ迫力と、句読点のない文が持つ独特なリズムが合わさった結果でしょう。
ひらがなだけで書かれた絵本なので低学年も読めますが、この不条理な感じのホラーは一人読みには向いていないかも。
同作者の『夜市』に雰囲気が似ていると聞いたので
読んでみました。
なるほど、不思議な感じが良く似ています。
まったく同じというわけではないので、興味があるかたは読んでみては。
表題の「夜市」と他一編お話が収録されています。
ホラー文庫から出ていますが、怖くはないです。表題の「夜市」、不思議で少し悲しいお話でした。