自分に自信が持てない、子牛のモー。
ある時、離れて暮らすお母さんが病気になったと聞いて……
気弱なモーがもぐらのゲンさんと冒険に出る
子牛のモーは、自分に自信が持てません。
恥ずかしいのでこっそりうんちをしていると、突然、目の前にもぐらのゲンさんが土の中から顔を出しました。
なんともおかしなことに、ゲンさんは、子牛のモーがうんちをしていたことにお礼を言いました。お礼を言われる意味が分からないモー。ゲンさんは、モーに、うんちがどんなに役立っているか教えてくれます。うんちの栄養が草や花を元気にさせること、その草花の根が腐ると、ミミズがそれを食べる。そのミミズをもぐらである自分がいただいているということ。
モーは自分のうんちが役に立っている事を知り、喜びます。
そのとき、鳩のピピさんがやってきて、モーのお母さんが病気だということを知らされます。お母さんのところに今すぐにでも行きたいのに、ピピは、もうすぐ日が沈んで真っ暗になるから連れて行けない、明日の朝まで待ってほしいと言われます。泣きそうなモー。そのとき、任せてくれと声を上げたのはもぐらのゲンさんでした。目こそよく見えないが鼻はよく利くから一緒に行けるというのです──
さあ、モーとゲンさんの冒険が始まりました。
幸せな読後感とともに、自己肯定感を育む一冊
日本の子どもは、自己肯定感が低いのだそうです。モーもそうでした。自分のやることに自信が持てません。
それでも、病気になったお母さんに会いに行くため、もぐらのゲンさんと一歩、踏み出すことに決めたのです。
読後感のよさは最高。誰にも負けないうんちができるようになったモーは、最初の頃のこっそりうんちをしていたモーの面影はありません。ゲンさんとの冒険で、一回り成長したんですね。
お話としても起伏に富んでいて、読んでいると引き込まれるようです。味のあるイラストもぴったりと物語にはまり込み、短いアニメーションを見ているかのようです。
それにしても男前はもぐらのゲンさん。
江戸っ子気質で面倒見がいい。カッコイイぜゲンさん!
ゲンさんは鼻が利くという自分の特技を使って、モーを導いてくれます。飄々としていて、細かい事にはこだわらない。こんなおとながまわりにいたら、頼もしいですね。
そんな男前のゲンさんと、お母さん思いのモーの小さな冒険。
自分の持った特技を生かし、勇気を出して一歩。
そして最後に、ハッピーエンド。
幸せな読後感とともに、自己肯定感を育む一冊です。
いろんな知識が話に出てくる
うんちというだけでおかしくて笑ってしまう年齢ってありますよね。でも、子牛のモーは冒頭で、うんちをしていることが恥ずかしく感じています。うんちだけで面白おかしい年齢の子でも、うんちをするということに一種の恥ずかしさを感じている年齢でもあります。この本は、うんちは面白いだけのものじゃなくて、大切なものなんだよと教えてくれます。
他にも、もぐらは目がほとんど見えない、ふくろうは夜でもものが見える、などいろいろ細かな知識がちりばめられています。もしかしたら、この一冊をきっかけに動物に興味を盛ってくれるかもしれない!? そんな魅力も持ち合わせた絵本です。
読み聞かせは、小学校低学年ぐらいまで。
本物のモグラはこんなん
余談
想像の悪魔のページが地味に怖かった