あらすじ
住み慣れた家を出て、一人旅に出たしゃもじのおじいさん、しゃもじい。
仕事が最近めっきり減ってきたけれど、まだまだ仕事はできるはずと、使ってくれる家を探す。
旅の行く先々で、しゃもじいさんは、壊れて使われなくなったモノや、古くなって見向きも去れなくなったモノたちと出会う。
しゃもじいさんは、自分たちでもまだ使ってくれる人がいるはずと一緒に旅をする。
しかし、やはり古くなったものや壊れたものを使ってくれるところは見当たらない。
最後に訪れた寺の和尚の一言が、しゃもじいさんを含む彼らを怒らせ……。
モノを大切に
古くなって使われなくなったしゃもじのおじいさんが主人公のお話。
しゃもじのじいさんで、しゃもじいさん。なるほど。
しゃもじいさんは、住み慣れた家を出て、一人で旅に出たのだという。
古くなり、仕事がめっきり少なくなっても、しゃもじいさんは後ろ向きになる事無く、前向きだ。
「でも、わしは まだまだ はたらける。
どこかで わしを つかってくれるところが あるはずじゃ」
しゃもじいさんは行く先々で、いろんな道具たちと出会う。古くなって捨てられたもの、壊れて使えなくなって捨てられたもの……。彼らは、落ち込み、または憤り、そして嘆いている。
彼らを励まし、まだまだ自分たちを使ってくれるところがあるはずだと励ますしゃもじいさん。
しゃもじいさんの連れ合いは増えていき、一団ともいえるぐらいになった。
しゃもじいさんたちは使ってくれる家を探すが、どこもモノがいっぱいで受け入れてくれない。
モノがいっぱい、でハッとなる。
少し壊れたぐらいで、また買えばいいやと考えている自分。しゃもじいさんの一団が出来上がったのは、そうやってすぐモノを買い換えてしまう人間が多いからではないか。安く買って、壊れればまた安く買いなおす。そのほうが楽だから……。
「こんな こわれた きたないモノ、つかえんわい……」
最後の最後にたどり着いた寺の和尚にぼそりと呟かれて、古道具たちはキレてしまう。
キレて当然である。壊したのは誰か。汚くなったのは何のためか。
それまで、しゃもじいさんは丁寧な言葉で、使ってくれないでしょうかと頭を下げていたのに……。
化け物化する道具たち。
それにストップをかけたのは、小僧さんたちだった。
小僧さんたちは、何と、彼らを修理して、使えるようにしたのであった。
一部の道具たちだけであるが、その修理方法がかなり具体的に書かれていてちょっと驚いた。
実践せよ、ということなのだろうが、絵本で包丁の研ぎ方を読むことになるとは思わなかったよ……。
なんにせよ、モノは大切に、こまめに手入れすべし、ということであろう。
最後のほうのページにもその旨張り紙がされていて、テーマが自然と理解できる。
しかし、主人公のしゃもじいさん、序盤から中盤ぐらいまでしか主人公らしいことをしていなくて、ちょっと残念である。
名前のインパクトが大きいだけに。
文章量は普通
文章量は普通だが、話を楽しむ絵本で、低学年向けだろう。
終盤に具体的な道具の手入れ法、修繕法のページがあるので、読み聞かせにはちょっと不向き。