あらすじ
たまごのカラ。
彼女は中身を大切に守っていた。
だがある日、たまごは無事孵り、中からトカゲが出てきた。
トカゲはたまごのカラを顧みず、どこかに行ってしまった。
それに憤ったのは、たまごのカラだ。
あんなに一生懸命、中身を守ってあげていたのに、お礼の一つもないなんて、というわけである。
そしてカラはカーラになった。
自分の生きたいように生きるのだ、と手足をはやし、旅に出たのであった……。
カラとカーラでは大違いなんだ
たまごのカラだったカーラ。
彼女は、ずっとたまごの中身をまもりつづけていた。
しかし中身のトカゲが生まれたら、後はもう、見向きもされない。ずっとまもってあげたのに、お礼のひとつもなく、孵ったトカゲは行ってしまうのである。
たまごのカラは、悲しんだ……
……こともなく、反対に怒った。
あれだけ大切に守ってやったのに、お礼の一つもないのかい、というわけである。
そしてカラは、こう思うのである。
「ふん、なにさ。あんなこなんて どうとでも なっておしまい。
これからは じぶんじしんのため、いきたいように いきるんだ」
そうして、カラはカーラになったわけだが、カーラ、思わずカーラ姐さんと言いたくなるような威勢のいい性格をしている。常に前向きで、竹を割ったような性格だ。見ていてとても頼もしく、好感がもてる。こんなふうにたくましく生きれたらどんなにかいいだろう。絵本には珍しいキャラクターともいえる。
カーラとなったカラは、旅に出た。
「いきたいように いきる」ため、ずんずん旅していくのである。
山にぶちあたっても、ずんずん進む。一つ山をのぼるたび、カーラはたくましくなっていく。
山という困難にも負けないカーラの生き方がまぶしい。
たまごのカラであるカーラは行く先々で悪口、陰口にさらされる。カラなんて役目を終えたらいらないもの、ただのゴミだというわけである。
そんな悪口や陰口にも、カーラは傷ついたり落ち込んだりしない。
「あたしがただのゴミだって。そのめんたまは ふしあなかい。
あたしはカーラ。なめんじゃないよ」
強い。
そしてカーラは実際、物理的にも強かった。
わからんちんが おおいから、
からてチョップと うしろまわしげりが じょうずになった。
カーラさん、すごいです……。
自分の生き方を貫いていくカーラ。自分の足で、手で、歩いていくのだ。いろんなものを見て、いろんなことを体験していく。いつしか、カーラは身も心も、広く、たくましくなっていた。
最後に、カーラは自分が守っていたたまごの中身であるトカゲと再会する。おぼれていたトカゲを救ったカーラだが、名乗りはあげない。誰だと尋ねられても、答えないのだ。名乗るほどのものじゃござんせんが、ではないが、このときの返答もかっこいい。
(トカゲに誰かと問われて)
「さあて、だれだかね。
せいぜい こんなドジふまず、
もっと おおきくなるこった。
おまえさんでも おおきくなって
ひとのおやになるころには、
あたしがだれだか わかるだろうさ」
そうして、カーラは去っていく。
歌を歌いながら。
カラと カーラの あいだには
みえない なにかが あるんだよ
だいじな なにかが あるんだよ
彼女が歌うこの歌詞に、その大事な何かが何なのか、彼女を見ているとわかるような気がしてくる。
それは自分らしく生きるとか、生きたいように生きるとか、読む人によって変わってくるのではないか。それにしても、カーラの生き方は力強くてまぶしい。
子ども向け絵本だがおとなの心にも響きそうなテーマ
子ども向けの絵本だが、テーマはおとなの心にも響きそうだ。
幼児、低学年向け。