あらすじ
ある冬の日、こうさぎは食べるものがなくなってしまったので、食べ物を探しに出かけました。
運良く、かぶをふたつ見つけたこうさぎ。
しばらく考えて、こうさぎはかぶをひとつ、ろばさんにあげることにしました。
こんな冬の日は、食べ物がなくなっているだろう、と考えたからです。
しかし、ろばさんは留守でした。
こうさぎは、ろばさんの家にかぶを置いて帰りました。
ろばは食べ物を探しに出かけていました。
さつまいもを見つけて帰ってくると、かぶが置かれているではありませんか。
はて……?と思いましたが、ろばさんはそのかぶをやぎさんに持っていってあげることにしました。こんなに寒いと、食べるものに難儀しているだろうと持ったからです。
しかし、やぎさんは留守でした。
ろばは持ってきたかぶをやぎさんの家に置いて帰りました。
やぎさんは、食べ物を探しに出かけていました。
白菜を見つけて持って帰ったやぎさん。
家に入ると、かぶが置かれているのを見て……。
心がほっとあたたまるお話
読後、心がほっと暖まる。
作品の季節は冬なのだが、そんな冬の寒さも和らぐような暖かい気持ちになる一冊である。
冬もまっただ中のある日、食べ物がなくなってしまったこうさぎは、食べ物を探しに出かけた。
こうさぎは、運良くかぶをふたつ、見つけることができた。
そしてふたつとも持って帰った──わけではなく、こうさぎは、こんな真冬だからろばさんもきっと食べ物がなくなっていることだろうとかぶを持っていってあげるのだ。
持っていってあげたのはいいものの、ろばは留守。
こうさぎは、持ってきたかぶをそっと置いて帰るのである。
ろばもまた、食べ物を探していた。
さつまいもを見つけたろばは家に帰り、そっと置かれたかぶを見つける。どうしたものか、と考えて、ろばはそのかぶを、こんな冬の日だから食べ物がなくて困っているだろう、とやぎさんに持っていくことにするのである。
しかし、やぎさんは留守。
ろばは、やぎの家にかぶをそっと置いて帰る。
食べるものを探していたやぎが家に帰ってくると、かぶが置かれている。やぎはしばらく考えて、ろばと同じことをする。
この繰り返しを続けていき、最後にこうさぎのもとにかぶが帰ってくるというオチ。
冬の寒さは厳しいものだ。手に入る食べ物だって少ない。それなのに、食べ物がなくて困っているだろうと友達を思いやる心の優しさと美しさ。友人のためを思ってした行為が、めぐりめぐって自分に返ってきたという、情けは人のためならずをそのまま表したかのような、素敵な物語である。
心が堅くなってしまいそうな冬の日に、誰かを思っての優しい行為。
誰かが誰かを思いやっている。そんな優しい世界を描いた、優しい絵本だった。
繰り返しのおもしろさ
物語の優しさを味わうとともに、繰り返しのおもしろさも感じられる一冊。
思いやりとは何か、静かに心にしみいってくる。
読み聞かせに向いている内容だ。
低学年、幼児向けだろう。