あらすじ
夜は、三人姉妹がつれてくる。
そのドレスはとてもきれいな星の模様をしている。
ドレスのすそがふんわりそよげば、風が吹く。
静かな夜は、だんだん盛り上がっていって……
夜のはじまりはドレスの裾で
研ぎすまされたセンスの光る、一冊である。
夜の光景を、静かに描写しつつ、だんだんと夜のリズムに乗せて、盛り上げていく。アート寄りの絵が、夜という不思議な時間、空間を表現している。
夜という静かであるはずの時間も、まったくの無ではない。
静かでありながらも、かすかなビートが反響している。そのかすかなビートをすくいあげて、静けさをもメロディの一部に組み込んで、夜はふけていく。
常識では考えられないファンタジックな世界がここにある。
ありきたりな夜はない。
静けさだけをたたえた夜はここにはない。
ここにあるのは、生きている夜だ。
メルヘンチックな側面を残しながらも、幻想的で活動的。だけど、昼間の喧噪とはまた違うビートを刻んでいる夜。
物語らしい物語はない。
ただ想像をかき立てる文章と、大胆な絵が広がっている。ここから、読み手は夜の気配を感じ取るしかないのだ。
そして夜は静けさへと還っていく。「ゆきのたまご」、なんて不思議な言葉の響きだ。しんしんと降る様が思い起こされるようだ。
残念ながら、この絵本の評価は分かれるだろう。
研ぎすまされたセンスも万人受けするようなものではないように、この絵本もそうなのだ。
夜という不思議な時間を描写した、静かな躍動を秘めた一冊だ。
ゆっくりと広がっていく想像の世界を楽しみたい。
好みが分かれる内容
物語らしい物語はなく、意味深長な場面も多いため、好みの分かれる内容となっているのは否めない。
文章の量は多くなく、絵もあわせて楽しむ絵本だ。
幼児、低学年向け。
