あらすじ
願い事を三つまで叶えてくれる不思議な泥人形、「どどのろう」という人形がある。
あるとき、旅人が、その人形を拾った。
旅人は、「どどのろう」の言い伝えを知っていたので、ためしにと「悪人が捕まりますように」とお願いをしたが、言い伝えをそこまで深く信じていなかった旅人は、「どどのろう」を旅の荷物になるからと川に捨ててしまった。
次にその「どどのろう」を拾ったのは、二人の悪人だった。
この二人の悪人も、「どどのろう」の言い伝えを知っていたので、お金儲けをしたいと思い、悪知恵を働かせて、「どどのろう」にお願い事をしたのであった。
最初は悪知恵がうまくいって、お金儲けできた悪人たち。
しかし、事態は急変して……。
不思議な泥人形、「どどのろう」
願いを三つだけ叶えてくれるという、「どどのろう」という泥人形。
しかし、金銀財宝がほしいという願い事だけは、叶えてくれないという。
偶然にも、「どどのろう」を拾った旅人。
言い伝えは知っていたので、「悪いやつがでたらすぐに捕まりますように」とお願い事をする。
でも、そんなにこの言い伝えを信じていなかったこの旅人、「どどのろう」を荷物になるので捨てた。
捨てた……!
一つお願い事するぐらいなら、ためしに三つ全部お願い事すればいいのでは……!?
それを……
捨てた……!!
しかも荷物になるからという理由で……!
しかし、この行為が、後々の伏線となっていて、お話は面白くなっていくのである。
本書はお話を読ませるタイプの絵本で、昔話風の世界観とお話がマッチしていて面白いものとなっている。
この捨てられた「どどのろう」、次に拾ったのは悪人。
悪人もこの「どどのろう」の言い伝えは知っていたので、悪知恵を働かせて、金儲けに走る。
金銀財宝を直接願わなくても、お金儲けをする方法を考えたのである。
お金儲けはうまくいいき、調子に乗ってアゲアゲな悪人の最後は──というところで、伏線回収となって、物語の面白さを体験できる。
悪いことはできないものだねえ。完全に悪人の自業自得なので、結末に後味の悪さは残らない。
不思議な泥人形「どどのろう」、そして絵に描いたような悪人、化け物、因果応報、と昔話のエッセンスを感じられる内容である。
しかし、この「どどのろう」、「一人三つまでお願い事をかなえる」んじゃなくて、「三つまでお願い事がかなえられる」という力を持っているということだったのか。
最初、「一人三つまで」だと思い込んでいたので、終盤、なるほどねーと感心してしまった。
役目を終えた「どどのろう」の最後が何となく、切ない。
この「どどのろう」の由来がまったく語られない分、不思議な気持ちになる。
裏表紙に、泥だんごを作って遊んでいる子どもが描かれていたり、事件解決後の桜の景色に天狗がいたり、「どどのろう」の不思議な力の由来を推察したくなってくる。
昔話の魅力が存分に詰まった面白い絵本だと思う。
「どどのろう」の姿形が、わりとリアルなので、霊験あらたかっぽい。
昔話風の不思議な話
物語を楽しむ絵本なので、文章の量はそこそこあるが、とても多いというほどでもない。
小学校低学年向けだろう。
読み聞かせなら、幼児でも大丈夫だと思う。
終盤のページが桜満開なので、春に読むといいかもしれない。
しかし、この「どどのろう」の姿はインパクト大で、ハニワ的な土偶が苦手な人は(私がそうだけど)、ちょっと怖いかもしれない。
ただ物語の中心にありながら、絵として存在感を放つことは少ないので、心配には及ばない。怖いのは表紙だけだ。