あらすじ
風雅の両親は半年前に失そうした。
近くに住んでいるおばさんの世話になりながら、一人暮らしを続けてきた風雅だが、限界を指摘され、おばさんの家で生活することに。
本当は家を出たくない風雅。風雅の家は、アンティークショップを営んでいた。両親がいない今、店はずっと閉店のままだ。
荷造りをしていた風雅は、木片のペンダント、「魔法のコルノ」を見つける。昔、父親から譲り受けたもので、一生に一度だけ、コルノに宿った木霊が願いを叶えてくれるという。
心から信じているわけではなかったが、父親からもらったものだとして、大切にしようと思う風雅。しかし、ひょんなことから、風雅はコルノに宿る木霊、シャナイアを呼び出してしまう。
願い事を言えとシャナイアに迫られて、風雅はつい、「兄になって、一緒に暮らしてほしい」と言ってしまい……
中学生の男の子と、美形の木霊が兄弟になる!?
主に女の子向けのかわいらしい児童書を書いているあんびるやすこ氏が、ティーン向けの、しかも主人公が男の子の作品を書いているのを知って、思わず読んでみました。
いわゆる神の視点で書かれているのですが、主人公の風雅の心情を描写した後で、他のキャラクターの心情の描写が入るという、このところあまり見なかったスタイルに困惑。風雅一人に心理描写を傾けてもよかったかな、と少し思いました。まあこのあたりは好みの問題ですね。
お話は、風雅の両親がすでに半年もの間失踪しているという重たい状況から始まります。唐突すぎて、風雅の心境を理解するのに時間がかかります。
そこにきて、ひょんなことから、あるアイテムの木霊、シャナイアを呼び出してしまい、一つだけ願いを叶えてやると言われます。
風雅が願ったのは、「兄になって一緒に暮らしてほしい」というものでした。……失踪した両親を見つけてほしいとかそういうものを願うのではと思ったのですが……。
風雅は口走ってしまった自分の願いにびっくり。読んでいるほうも唐突すぎてびっくり。
そうして、シャナイアは風雅と兄弟になり、一緒に暮らすことに。
導入部分がかなり苦しく、状況の把握に手間取りました。
それをのぞけば、風雅もシャナイアもとても魅力的なキャラクターで、さくさく読み進めていけました。
特にシャナイアのキャラがふてぶてしい自信にあふれた美形というおいしいキャラクター。存在感があってとてもよかったです。
話の内容は、アンティーク品にまつわる不思議な事件を解決するといったもの。アンティークの知識がなくても、説明してくれるのでとても分かりやすいです。
ところどころ、ご都合主義な展開や駆け足な展開が気になりましたが、優しい気持ちになるハッピーエンドに終わってよかったと思います。
ただ千明のしゃべり口調が無理矢理な感じのお嬢様口調で、読んでいて少しつらかったです……。
続き物ですが、大まかな話は完結します。
風雅とシャナイアのコンビが好きなら、続きも読みたくなるでしょう。
ティーンの女の子向け
主人公が男の子、その相棒(兄)が美形男子、そして恋愛に絡んだ話と女性向けの色合いが濃いです。
挿し絵のシャナイアは本当に美形。これは確かに見とれます。
傲岸不遜なシャナイアがなんだかんだといって面倒見がよいところが見ててほんわかします。
そのほか、金儲けに熱心だったり、カップめんが好きだったり、妙に人間くさいところも魅力的。風雅がツッコミ役になるときも。
血のつながりや戸籍上のつながりはありませんが、兄弟の絆を描写する箇所も見られ、二人のこれからが気になるところです。