あらすじ
大きなどんぐりの木に住んでいるカエルとアマガエルとトカゲ。
ある日、トカゲがカエルの家の扉をたたきました。
自分たちが住むどんぐりの木に、得体の知れないけむくじゃらな生き物がいるというのです。
カエルが様子を見に行くと、けむくじゃらな生き物は、無心に葉っぱを食べています。この勢いでは、葉っぱがなくなってしまうのではないかと心配になりましたが、けむくじゃらはある日の嵐の日、姿を消してしまいました。
けむくじゃらの行方もわからないまま、夏がやってきました。
カエルがいつものようにハンモックで本を読みながらうつらうつらしていると、木の下から、そよ風が吹いてきて青い羽のチョウチョが舞い上がってきました。
チョウチョはカエルに言いました。
「わたし、けむくじゃらよ。」
それに大いに驚いたカエル。
この日から、カエルは「そらをとびたい。そらをとびたい。」と独り言ばかり言うようになってしまいました……。
空を飛びたいカエルと、それを手伝う二匹のさわやかな友情
「空を飛びたい」というのは、魅力的な永遠のテーマらしい。次回あたりに『リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険』をレビューする予定だが、その絵本も偶然に、空を飛びたいネズミの話だ。
コミカルなカエルの絵が楽しげに表紙を飾る『かえるのそらとぶけんきゅうしょ』、本文にもイラストが満載で目に楽しい。
しかし……カエルのほかにトカゲも登場するのだが、どう見てもワニにしか見えない。あと、この本のカエルにはヘソがある。チョウチョも妖精のように描かれていて、おもしろい世界観を構成している。
タッチが独特で個性的だが、みんな愛嬌があって愛らしい。
けむくじゃらな毛虫が空を飛ぶ青いチョウチョになったのを知ったカエルは、自分も空を飛びたいと熱烈に願うようになる。空を飛ぶため、家に一人こもって研究を重ねるカエル。友達のアマガエルとトカゲは急に空を飛びたいと言い出したと心配している。
結局、カエルの空を飛ぶ研究に二人は力を貸してくれることになるのだが、なんだかんだと三人の友情が篤くて見ていてほほえましい。
ほほえましいといえば、カエルの考え抜いた結論がまず羽を作るだけでなくて、「体を鍛える」ところ。体が重すぎるのでやせる、というのも妙に現実的だ。きっと大まじめに考え抜いた結果なんだろう、と想像にかたくない。
軽口をたたきあいながら、カエルの空を飛ぶ実験に協力するトカゲとアマガエルの様子は、気心の知れた男の友情を見るようだ。
頑固で偏屈なカエル。
お調子者で口達者なアマガエル。
面倒見がいいトカゲ。
おもしろい三人組だ。いったい、どんな成り行きで友達になったのだろう。しかし、この三匹がいれば、毎日も楽しそうだ。
カエルは、ちょっとの失敗で思い悩んだりしない。反省点をあげて、次に生かそうと建設的だ。明るくて前向きなカエルにエールを送りたくなる。
そんなカエルの性格をわかっているトカゲとアマガエルは、慰めるより軽口をたたいてエールを送る。これもすてきな友情の形だと思う。
カエルは一度決めたら、あきらめない。
彼の前向きな姿勢が頼もしい。
「おれ、かならずとぶぞ!」
「ねんざくらいでへこたれない。おれはとぶぞ!」
「まだまだ!」
最後にようやく、ほんの少しつかんだ夢の端っこ。
夏空に叫んだカエルの言葉が一番印象的だ。
「おれ……、もっともっとうまくとぶぜ!」
偏屈で融通の利かない性格をしてるけど、カエル、格好いいじゃないか。
全ページにカラーの挿し絵という豪華さ
独特のタッチで緑の葉や草があおあおと描かれ、カエルやトカゲ、アマガエルが生き生きと動き回っている。
挿し絵はすべてカラーで、挿入のされかたは文章中に入ったり、ページの端を彩ったりとパターン性はなく、変化がある。カラーの美しい挿し絵は、目に楽しい。
文章の量は多く、中学年からが対象だろう。
長めの話なので、読み聞かせするには計画的に。ただ、あまり読み聞かせには向いていないような気がする。
