あらすじ
南の島に、猫と魚がいました。
お互い仲がよく、猫はときどき、魚の中に入って「ねこざかな」になります。
ある日、「ねこざかな」は海の底で、友達と一緒に楽しくダンスをしていました。
しかしそのとき、漁師さんの網が降りてきて、みんな捕まってしまいました。
さあ、大変です。
漁師さんは網にかかった「ねこざかな」と友達たちを引き上げて、売り物として市場に並べてしまったのです……!
かわいらしい「ねこざかな」
魚の中に猫が入って「ねこざかな」。
食べるとか食べられるとかじゃなくて、お互い友達だから「ねこざかな」でいいんです。
「ねこざかな」という不思議な生き物じゃなくて、魚の中に猫がINした状態が「ねこざかな」。
なんだか、魚の着ぐるみを着た猫みたい。
お互い承知の上で、「ねこざかな」になっているから、とっても楽しそう。
妙に生えそろった魚の牙が描かれているだけに、なんだか猫が食べられているようにも見えなくもないけど、異種間の友情って現実世界でも成り立っているそうだから、猫と魚が仲良くしたっていいじゃない。なにより「ねこざかな」の絵面がかわいい。
恥ずかしながら、「ねこざかな」がシリーズものだって知らなくて、はじめての「ねこざかな」の絵本が『ばんごはんはねこざかな』になりました。機会があれば、一作目の『ねこざかな』も読んでみたい。
この『ばんごはんはねこざかな』、飛び出すしかけ絵本ですが、しかけのページは見開き一ページだけです。結構ダイナミックな動きをします。
この本、とにかく「ねこざかな」がかわいい。
晩ご飯に買われそうになったときの、漁師さんの怒濤のプレゼンテーション。
どんな料理に向いているかしら、というお客さんの質問に具体的に答える場面、料理法のイメージ画つきなのだけど、「ねこざかな」に愛着をもって読んでいる側からしたら、「開き」「丸干し」にしちゃったところはどうにもこうにも見ててひきつった笑いしか出てこない。
確かに、魚はそう食べる方法もあるけども、うーん、これはちょっと、かわいい!なんて悠長に構えてられないぞ。
危機感を覚えた魚は「逃げなくちゃ!」と必死になるのに、猫のほうは寝ぼけたまま歌いだし踊り出す始末。
寝ぼけてたって、漁師の網に引っかかって捕まって売られるという状況なのに、君、寝てたの??
猫よ、君はそんなのんびりな性格でよくぞ生き抜いてこられたな……。
何にせよ、しっかり者の魚のおかげで助かった「ねこざかな」。
しっかり者とのんびり屋の息のあったコンビネーションで、ピンチを切り抜けて一安心。
最後の最後に、再びご機嫌に歌を歌い出す猫を見ていると、まあほんと、猫らしくマイペースですこと、と笑いたくなるのでありました。
読後、明るく楽しい気分になれる
かわいらしい「ねこざかな」が歌ったり踊ったり、場が和んだところでふりかかる、晩ご飯にされるかもしれないという災難。
一転して大ピンチなのですが、それもうまい具合に切り抜けてハッピーエンド。全体的に明るい調子の絵本です。
特にひねったお話ではないので、「ねこざかな」が好きな人や、鮮やかな色合いが好きな幼児、低学年向け。