怪談えほんシリーズと銘打たれた9冊の絵本があります。
良質の本物の怪談を子どもに届けたい、そんな想いから、そうそうたる顔ぶれが揃ったこのシリーズ。
子どもは怖い話が好き。怪談話も大好き。
学校の怪談に傾倒する子もいます。私もそのクチでした。
怖い話大好き、妖怪幽霊話大好き。
だから、公式ページの
子どもたちは、おばけが大好きです。
不思議な話、怪しい話、怖い話が出ると、いきいきと目を輝かせて聴き入ります。なぜ人は、おばけの話すなわち「怪談」に惹かれるのでしょう。
おそらくその根源には、未知の世界に憧れたり、眼前の現実を超えた世界を希求してやまない心
――人類進化の源でもある探求心が息づいているのだろうと思います。そしてまた、優れた怪談作品は、人の心の真実や世の中の真理を、恐怖する愉しみとともに私たちに教えてくれます。
幼いころから怪談に親しむことによって、子どもたちは豊かな想像力を養い、想定外の事態に直面しても平静さを保てる強い心を育み、さらには命の尊さや他者を傷つけることの怖ろしさといった、人として大切なことのイロハを自然に身につけてゆくのです。私たちが人生で初めて出逢う書物である「絵本」を通じて、良質な本物の怪談の世界に触れてほしい
――そんな願いから「怪談えほん」シリーズは生まれました。
……というのは、間違いではない。
間違いではなかったんだけど、その肝心のラインナップが濃すぎた。
濃すぎたせいで、怪談えほんというより、怪談“考察”えほんになってしまった感がどうしてもぬぐえないものになってしまいました。
綾辻行人先生とか絶対何か仕掛けてるに決まってるじゃないですか
それでも名だたる豪華執筆陣から生み出された本は、どれも不気味で怖い良質な絵本となっています。うん、こういう絵本大好き! トラウマ絵本大好きマンとしては、チェックせざるを得ないですよね!
個々の本のまじめなレビューはリンク先を見ていただければということで、独断と偏見で、怖さ・不気味さ・不条理さその他もろもろの観点から、シリーズ9冊をまとめてみました!
眠れぬ夜にますます眠れなくなる事請け合いの考察怪談えほん。
一冊といわず9冊全部いかがですか?
第一期シリーズ
『悪い本』 宮部みゆき×吉田尚令
不安になる怖さ。
物語らしい展開はあまり見られないが心に訴えかけてくる怖さが武器。
ぬいぐるみたちの目が死んでいる。
『マイマイとナイナイ』 皆川博子×宇野亜喜良
シリーズ随一の不条理難解展開で読者を翻弄。
個性的な展開とファンタジックな登場人物に読者の考察脳がはかどる。
『いるの いないの』 京極夏彦×町田尚子
シリーズ中、「怖い」というパラメーターが最高を記録しているであろう怪談絵本。
田舎の家に住めなくなるし、暗闇が怖くなる。
『ゆうれいのまち』 恒川光太郎×大畑いくの
無限ループってこわくね?を体現したかのような話の展開に考察脳がはかどる一冊。
すべて春の世の夢。主人公はそれでいいのか……
『ちょうつがい きいきい』 加門七海×軽部武宏
シリーズ中、「衝撃」というパラメーターを最高記録したラスボス。
絵も怖いし、個人的に蝶番の隙間に謎のトラウマのある私には、かなりのトラウマ絵本となった。敗北を喫した。
第二期シリーズ
『かがみのなか』 恩田陸×樋口佳絵
鏡という身近な恐怖アイテムを武器に迫り来る怪談絵本。
主人公に悲壮感がないのがさらに怖い。わりとたのしそう
『おんなのしろいあし』 岩井志麻子×寺門孝之
シリーズ中、「色気と恐怖」を武器に変則的に襲い来る一冊。
白いおみ足を拝めるが、全然嬉しくないなんて。
思春期の目覚めをこんなふうに迎えたくない。
『くうきにんげん』 綾辻行人×牧野千穂
美しい絵と幻想的な雰囲気で読者を安心させ、一気に畳み掛けてくる油断ならない一冊。
考察脳が働くと更に怖くなる二重の罠。
『はこ』 小野不由美×nakaban
第二期シリーズ中、一番の難解な展開を持つ一冊。
考察しなくてもなんとなく結末が分かるところがやはり怪談えほんシリーズ。
ベチャベチャ音がするって書いてあったけど、ねえ一体何がどんなふうに入ってるの?
まとめ!
単純に怖い!となるのは『いるのいないの』でしょうか。
その次に怖いのが『ちょうつがい きいきい』かな、といった感じです。
一番難解だったのが、『マイマイとナイナイ』。独特な世界観に不思議な話の展開に、本当に翻弄されます。
幻想的な怖さは『くうきにんげん』でしょうか。いろんな意味でヤバイと思ったのは『おんなのしろいあし』でした。
どれも個性的な本になっていますので、気になった方は是非、手にとって見てください。
考察がはかどりますよ!