百鬼夜行シリーズ等で知られる作家、京極夏彦氏の書かれた怪談絵本。
不安げに天井を見上げる少年が、いやがおうにも不安を掻き立てさせます。
そう、これは怖い本なのです。
文章の持つ力と、絵の持つ力が合わさって、さらにこわい……
おばあちゃんの家で暮らすことになった少年。
おばあちゃんの家は、古い家屋で、とても天井が高い。高すぎて、上のほうは真っ暗だ。
何かがいそうな気がする。いるんじゃないだろうか。もし何かがいたらどうしよう。
少年はおばあちゃんに何かがいるような気がすると訴えますが、のらりくらりと(大人風にいえば理に適ったような言い分で)、いるともいないともはっきりしない答えをもらってしまいます。
一体、「何か」はいるの? いないの?
この「いるのか、いないのか」というのが、人の共通した恐怖ではないでしょうか。作中の少年は「いる」とも「いない」とも決めきれず、不安を抱えたまま、うっすらとした恐怖を感じています。
ほら、天井の低い近代建築の家屋でも、ふとした瞬間、押入れのスキマや冷蔵庫と壁の間の暗がりから、何かの気配を感じませんか……?
怪談えほんシリーズの第三作目、『いるのいないの』
子どもたちは怖い話が好き。
書店に行けば、子ども向けの怖い本がずらりと並んでいます。
好きなんです、本当に。怖い話を読んでしまったあと、眠れなくなって泣いたり、トイレに行けなくなったりするのに。学校の怪談なんて大人気です。自分たちが学校という場所に通っているのにも関わらず、七不思議なんて噂しあう始末。怖いもの見たさ、というのは子どもの頃から備わっているものなのですね。
そういった怪談好きな子どもたちのため、良質な「怪談」に触れて欲しいといった思いから企画されたのが、「怪談えほん」シリーズ。怪談話には、想像力を養うほかに、善悪の区別、人としての大切な他人を思う気持ちを育む力がある。その名目のもと、怪談文芸や奇想文学のプロフェッショナルたちと実力派画家たちが美しく怖い絵本を作り上げたのだそうです。この『いるのいないの』はこのシリーズに属しています。
他のラインナップを見ると、確かにあまり絵本では見かけない名前がちらほら……どの作家の「怪談えほん」もぞっとするような表紙にできあがっています。内容も怖く不安になるものも多数なのですが、そちらの紹介はまたの機会に。
怖い話が好き!とはいっても……
感受性の強い子にとっては、かなりの刺激。
「いるのいないの」の恐怖は、完全に自己責任で……。