あらすじ
赤いボタンがある。
このボタンは押してはいけないボタン。
押したら大変なことになる。
押さないよね? 押したらダメって言ってるじゃん。
しかも、変な生き物が出てきて、このボタンはおしちゃいけないと忠告してくるのだが……。
タイトルからして、押してくれと言っているようなもんである。
ページをめくると、変な生き物が、こう言ってくる。
「このボタンを押しちゃいけない」。
描かれているのは赤いボタン。
押すなと言われれば押したくなるのが人情。
それをうまくついた、コミュニケーション絵本である。
押したらダメ、押したら大変なことが起きる、とさんざんあおっておいて、中盤から終盤にかけて、結局ボタンをおすことを要求してくる。理不尽だ。
一回押して、とか、二回押して、とか絵本が言ってくるので、仕方なく押すと、変な生き物が二人になったり、いっぱい出てきたりといろんなことが起きる。
本を振って、増えてしまった変な生き物を追い出して!というのもあるが、このあたりの仕掛けは『いたずらえほんがたべちゃった!』に似ている。
そんなこんなで楽しいコミュニケーション絵本。
一対一や、少数での読み聞かせに最適だろう。
話の内容はほとんどない。とにかくボタンを押してはいけないというルールがあるだけだ(そのルールも中盤に不思議な生き物によって破らされる)。
こらえ性のない子が読むと、早速ボタンを押している光景が思い浮かぶようで楽しい。
おとなは……さすがに押したり……しないよね……?
絵本であることを自覚している絵本
絵本の登場人物である変な生き物は、自分が絵本の住人であることを理解していて、読み手にあれこれと話しかけてくるといった構造をしている。
その上に、絶対押してはいけないボタンがあることで、コミュニケーションがはかどるだろう。
読み手も聞き手も楽しめる一冊だ。
幼児向け。