あらすじ
少女は、ゴミ箱の中にいるぬいぐるみに気がついていました。
雨の日も、風の日も、ゴミ箱の中にいるぬいぐるみたち。
少女は見かねて彼らに声をかけ、家につれて帰ります。
お母さんには内緒で、彼らをお風呂にいれてあげて、針と糸で修繕してあげて……。
だけど修繕しおわったぬいぐるみたちは、なんだかちょっと……。
見つけたものはぬいぐるみたち
主人公の少女は、ゴミ箱によれよれでくしゃくしゃのぬいぐるみがいくつも入っているのを見ていた。
彼女はそのぬいぐるみたちが気になって仕方ない。雨の日も、風の日も、彼女はゴミ箱の中のぬいぐるみを見ていた。
そして彼女は、彼らに声をかける。
なにしてるの、お母さんはどこにいったの、兄弟は?……等々。
おとなから見れば、ゴミ箱の中にあるのだから捨てられたのだろうと判断するところだが、様子を見てから声をかけるという少女の行動には、ぬいぐるみたちを丁重に扱おうとする姿勢が見える。まるで、自分より小さな子に対するそれだ。
少女は、ぬいぐるみを家に持って帰る。
汚れきっていたぬいぐるみたち。
彼らに向かって、少女はこう言う。
ほっぺもお耳もまっくろくろ。
お母さんにみつかったら、きっと、こういうよ!
おふろに、はいりなさい!
少女が小さなお母さんのようで、ほほえましい。
そして、少女はぬいぐるみたちをお風呂にいれ、洗い、乾かし……ぬいぐるみたちに修繕が必要なことに気づく。
少女は、お母さんの力を借りず、自力で裁縫箱の糸と針で直そうとする。
しかし結果は……
うーん……なんかちょっと思ってたのと違う……。
なんで、なんで、
お母さんみたいに
上手にできないの?
泣き出してしまう少女。どうしようと困っていると、かすかな声が聞こえてくるではないか。
その声は、ぬいぐるみたちから発せられていたのであった。
ぬいぐるみたちはなおしてもらったところが気に入っているという。
そして、だからもう「捨てないで」とお願いしてくるのだ。
ぬいぐるみたちのけなげさ、愛しさが増す一場面である。
一生懸命なおしてくれたのだから、不満不平なんてない。むしろ気に入っている。
これが、お母さんにお願いしてきれいになおしてもらっていたらどうだろう。こんな展開になっただろうか。いや、ならなかっただろう。
少女が自分の力で、ぬいぐるみたちを洗ってあげて、修繕したこと。
彼女の優しい心が、ぬいぐるみたちにも伝わったのだ。
だからこそ、ぬいぐるみたちも、少女のもとにいたいと願ったのだろう。
最後のページで、少女がぎゅっとぬいぐるみを抱きしめる場面、心があたたかくなる。優しい気持ちが呼び起こされる絵本である。
暖かい気持ちになれる一冊
心が優しくなる一冊である。
もの大切にする大切さも伝わってくる。
読み聞かせにも向いているだろう。
幼児、低学年向け。