あらすじ
オオカミのガブルくんは料理好き。
ガブルくんの作る料理はとてもおいしいので、みんなが食べに来ます。空のお月様も食べに来るほどです。
あるとき、料理を食べに来たお月様の頭がギザギザしていたので、どうしたのかと尋ねると、お月様はコウモリオニにやられてしまったのだと話してくれました。
実は、お月様は、100年に一度実をつける、チョコラボンボンの実をガブルくんへのお土産にしようと取りに行ったのですが、コウモリオニにやられてしまったのでした。
チョコラボンボンの実!
それはこの世で一番、おいしい実。
ガブルくんは、その実が食べたくてたまらなくなってしまいました。
コウモリオニは恐ろしかったのですが、ガブルくんは意を決して、チョコラボンボンの実をとりに、コウモリ山へ向かうことにしたのでした。
ガブルくんは、チョコラボンボンの実を無事手に入れることが出来るのでしょうか……?
ドキドキハラハラ、幻の実を求めて!
りょうり すること、そして たべることが
なにより すきな オオカミが いた。なまえは ガブル。
……という出だしから始まるこの絵本。
オオカミ=肉食=料理大好き、で殺伐とした世界観を瞬時にして想像してしまったが、読んでみるとまったくそんなことはなく、むしろ、物語を楽しむ絵本として、とても良い絵本だった。
ガブルくんの料理はとてもおいしいので、近くに住む友達はもちろん、空のお月様も食べに来るほど。
肉料理はどうしているんだろう……というのはいらんツッコミである(蛇足だが、ガブルくんたちはシチュー的な何かと魚料理を食べていた)。
お月様から、「コウモリやまのチョコラボンボンの木が100ねんぶりに実をつけた」という情報を得たガブルくん。
この世で一番おいしい実と聞いて、ガブルくんは食べたくて仕方ない。
しかし、コウモリやまには、コウモリオニという恐ろしい怪物がいる……。
本書は、冒険物である。
チョコラボンボンの実を求め、ガブルくんはコウモリやまに出発するのだ。
山あり谷あり、はらはらどきどきする。
異時同図法をふんだんに用い、ガブルくんの冒険が紙面を埋め尽くす。ガブルくんの行く手を阻むのは、コウモリオニだけではないのだ。さまざまな怪物たちが、ガブルくんを食べようと襲い掛かる。
文章と絵が一体化し、ガブルくんの冒険が繰り広げられている。
果たして、チョコラボンボンの実を手に入れることが出来るのか……?
わくわくして目が離せない。
しかも、「チョコラボンボン」である。
一体、どんな実をしているのか……? とんな味をしているのか……?
何となく、チョコレートっぽい味を想像する。
そして、ガブルくんはコウモリオニと対峙する。
コウモリオニ……どんなに恐ろしげな姿をしているかと思えば……
コウモリオニ、全然コウモリの姿をしてない……
どちらかというと、あの……
羽の生えた休日のおっさんみたいな姿をしている……
しかし、足元に描かれた無数の骨や、怪物をわしづかみしているところなど、恐ろしい怪物らしいところは表現されている。
このコウモリオニ、何をしていたかと思えば……
まずいシチューを作っていた。
頭からバリバリ食べるんじゃなくて、料理……するんだ……。
ガブルくんを捕まえたコウモリオニは、ついでにこいつもシチューの中に入れてしまえと、料理下手が思いつきで材料を追加して更に不味くなるという状況を地で行おうとしていた。
食べられてしまう!と震え上がるガブルくん……にはならなくて、料理好きな魂が許さなかったのか、ガブルくん、こう言い放った。
「ぼくは こんな ごみばこシチューに、はいるのは まっぴら ごめんだ!」
ごみばこシチュー
ごみばこシチュー
この言葉に少なからず傷ついた……のかどうかは分からないけど、コウモリオニのトーンが心持ち下がる。
その隙をつくように、ガブルくんは「このシチューよりおいしいシチューを作ってみせる」と料理漫画の主人公のようなことを言い放ったのだった。
料理好きなガブルくんが作れば、シチューがおいしくできあがるのは当然のこととしても、それだけで終わらないのがこの絵本の面白いところ。
ガブルくん、結構、抜け目がない。
こうして、見事、ガブルくんの冒険は目的を達成して終わるわけだけど、本当にわくわくはらはらした絵本だった。
これは実に面白い。冒険物が好きなかたはぜひ読んで欲しい一冊である。
それで、「チョコラボンボンの実」だけども、なんかチョコレートとは関係なさそうな形状と色をしており、「チョコラボンボンケーキを作りますよ」というガブルくんの発言からすると、どうやら果物の類のようだ。見た目、ナシっぽい。
実、というからには果物の可能性が高かったのだけど、なんだかほら、お酒の入ったチョコレートを思い出したのは私だけでないはず。
読み応えのある一冊
絵本という少ないページ数でありながら、読み応えのある一冊。
ガブルくんも賢く、勇気があって頼もしい。
低学年向け。
読み聞かせ映えするだろう。
