あらすじ
ある水曜日のこと、おばさんが下げたバケツからぴしゃんとしずくが飛び出した。
そのしずくは、一人で旅に出た。
しずくはきれい好きなのに、旅の間に埃で汚れてしまった。
たまらなくなったしずくは、洗濯屋さんに行くことにした。
だけど洗濯屋さんの前で、親切なおばさんたちが教えてくれた。
この店はドライクリーニングだから、しずくは乾いて困ってしまうでしょう、と。その上、しずくには脱ぐ服をそもそも着ていない。
そこでしずくは考えて、お医者さんに行くことにしたが……
勢いよく展開していく話から目を離せない
ひょんなことから始まる、しずくの冒険。
短いページ数なのに、しずくがいろんなところへ行き、大冒険を繰り広げているかのように思えてくる。テンポのよい文章と、ぽんぽんと進んでいく小気味よい早い展開がそう思わせるのだろうか。
シンプルなデザインなのに、しずくの表情はとても豊かに見える。リアクションもコミカルだ。
起伏の激しい物語の展開は息をつかせないばかりか、しずくの行く先も予想できない。不測のおもしろさがある。
バケツからこぼれたしずくが、旅に出るというストーリーだが、途中でお日様に照らされて蒸発して空に上り、雨になって降る、などといった、自然現象を組み込んだ展開もおもしろい。しずくが主人公でなければ望めない展開が多数用意されており、まさに『しずくのぼうけん』というタイトルにふさわしい。
これは、しずくというキャラクターの冒険を通して、水の科学的変化を伝える絵本でもある。
「どうして雨は降るの?」と素朴な疑問を抱く子どもたちに、水の変化を分かりやすく説明する一助となるだろう。
しかし、それにしても、これだけテンポのよい絵本はなかなかない。
特徴的な書き文字字体もデザインとしておもしろいが、句読点が一切ない文章も個性的。
句読点を省くことで、語り口上のような演出になっている。
出版社のコメントでは、「モダン」という言葉が使われていたが、なるほどこれは確かにモダンだ。
なかなか日本の絵本ではめぐり合えない。アメリカ絵本の様子ともちょっと違うな、と思ったら、ポーランドの絵本だった。なるほどモダンか。モダン。腑に落ちた。
読後、ショートアニメを見たような気分になる一冊だ。
テンポがよいので読み聞かせしやすい
テンポがよく、読みやすい本文なので、読み聞かせしやすい。
内容は低学年向け。