『こびとづかん』──発見!コビトは実在した!個性的な絵柄で描かれる、コビトの生態

あらすじ

ある日、主人公の「ぼく」は、緑色の変な抜け殻を見つけた。
何かわからなかったぼくは、じぃじにこれは何か教えてもらうことにした。

すると、じぃじは教えてくれた。
これは、コビト、クサマダラオオコビトの抜け殻だと。

コビト?
じぃじは教えてくれた。コビトはいるのだと……。

 

コビトの捕まえ方や生態を紹介した絵本

不思議な生物、コビト。
虫でも動物でもないこの生き物について紹介する絵本。
なんといっても、その濃い絵柄が特徴だろう。この絵柄は万人受けするようなものではなく、人によっては怖い、気持ち悪いと感じることだろう。現に私の周りのおとなたちは、絵柄が気持ち悪くて受け付けないと言っていた。確かに今見ても濃い。

しかし一時期コビトは流行した。
この本は、コビトシリーズの初期作にあたる。
「づかん」というタイトルだが、いわゆる図鑑ではなく、ストーリー仕立ての内容となっている。

 

不思議な緑の抜け殻を見つけた男の子。
じぃじにこれは何か聞いてみると、これはクサマダラオオコビトの抜け殻だという。
しかも、世の中には、みんながしらないだけで、いろんなコビトが生息しているのだという。
しかし、じいじ、福禄寿みたいに頭が長いんだけど、そっちばかり気になるよ……。

 

いろんなコビトがいるらしいということを知った主人公の「ぼく」は、早速、コビト捕獲作戦に乗り出す。
「こびとづかん」という、昔じぃじが発見したコビトのデータが記録それた本を片手に。

捕獲作戦に乗り出した「ぼく」。
次々とコビトを捕獲する。一体にあたり、六ページほど使って紹介や捕獲場面を描いているので、ページの尺からそんなにたくさんのコビトが出てくるわけではないが、コビトの個性的な生態を詳細にまとめている。

クサマダラオオコビト、リトルハナガシラ、モクモドキオオコビト、ベニキノコビトの生態や捕獲方法の紹介が載っている。それがまたぬかりない紹介方法なので、専門書の様相を呈している。

生き生きと描かれる濃い顔で迫力満点なコビトたち。
いかにももっともらしく描かれているので、もしかしたらいるのではないかと子どもたちは思うかもしれない。いや、本当に存在するのかも……?

 

四体のコビトを捕獲した主人公の「ぼく」。
大切に育てるよ、という言葉に、福禄寿……じぃじは静かに言う。

「コビトも人間も なにも変わらない。大きいか小さいか、ただそれだけじゃ。もしお前が虫カゴに入れられたら どうする? パパやママと引き離されたら どう思う?」

それを聞いた主人公の「ぼく」は、あくる日、コビトを全部放したのだった。

 

それからというもの、コビトを見つけられなくなった主人公。
だけど、じぃじは、コビトはいつも見守っていると言ってくれる。

コビトとの遭遇。
それは、主人公にとって不思議で、心わき踊る思い出となったのだ。

 

リアルでどこかコミカルな濃い絵柄で描かれるコビトたち。
私たちが気づかないだけで、コビトは私たちを見守ってくれているのかも……。

 

不思議な生物、コビト

丁寧にコビトの紹介をしてくれる内容でありながら、ストーリーもあるという構成。
濃い絵柄は残念ながら好みが分かれるところだが、もっともらしいコビトの説明に、もしかしたらいるかもという想像力が刺激される。

コビトの姿に愛嬌を感じるようなら、読んでみることをおすすめする。
幼児、低学年向け。