あらすじ
八百屋と、石屋と、花屋の父さんは仲がいい。
あるとき、八百屋の店頭に並べられていた菜っぱが言い出した。
花屋の娘さんを嫁にもらいたい、と。
同時期に、石屋の石も同じことを言っていた。
花屋の娘さんを嫁にもらいたい、と。
八百屋と石屋の父さんは、彼らは息子同然と、まかせとけ!と張り切る。そして、早速、花屋の娘さんに話にいくのだが……。
果たして、石と菜っぱは、娘さんを嫁にもらえるのか。
嫁にもらえるとしたら、どちらが嫁にもらえるのか……
花屋の娘に求婚したい
八百屋と花屋と石屋のおっさん……父さんたちは仲良し。
毎日エンジョイしていたのだが、ある出来事で大変なことになってしまった……!
なんと、八百屋の店頭に並べていた菜っぱが衝撃的なことを言い出したのである。
「とうさん、とうさん、わたしは はなやの むすめを
およめに ほしいが いかがなものか?」
これには八百屋の父さんびっくり。
いかがなものか、と聞かれてもしらんがなといった感じだし、いきなりなにを言っているんだという感じだし、もう意味が分からないのだが、八百屋の父さんはこう言うのである。
「おまえは うちの だいじな やさいだ。
むすこも どうぜん まかせとけ!」
ええええー……
八百屋の父さん、張り切り父さんになってしまった……。
時を同じくして、石屋の父さんにも衝撃的なことが起きていた。
なんと、石が、同じく花屋の娘を嫁にほしいと言い出したのである。
石屋の父さんも、八百屋の父さんと同じく、息子も同然まかせとけ!と張り切り父さんとなってしまったのである。
W張り切り父さんは、早速、それぞれ息子同然の菜っぱと石をつれて、花屋の娘さんに会いに行く。
そして、娘さんに、菜っぱや石を示し、「どうかお嫁に」とお願いする。
この娘さん、気だてもよくてモテモテのお嬢さん。
花屋の父さんは、娘の婿が「石」とか「菜っぱ」なんて認められない。ぷんぷんと怒り出す始末。
……というか、異類婚姻譚でも「石」とか「菜っぱ」はあんまりみないし、そもそも結婚できるのか?という疑問があるのだが、そのへんは石屋と八百屋の父さんの頭にはないようである。
そもそも石とか菜っぱが喋る事態も……
当の娘さんは、達観したもので、怒る父さんをなだめる。そんなに怒っちゃ体に毒よ、と。
そしてよくよく聞いてみれば、「菜っぱ」や「石」が花屋の娘さんと結婚したいと言っているのかと思えば、違ったのである。
菜っぱは、菜っぱについていた青虫が、石は、石の影に隠れていたかたつむりが、結婚したいと言っていたのである。最初からそう言えよ……。
なぜか八百屋の父さんも石屋の父さんも、この新たなる事実に喜び、さらにはりきって、手のひらにそれぞれ青虫とかたつむりを乗せ、求愛するのである……。どうかお嫁にきてください、と。
なんだこりゃ……。
絵面がすごい……。
花屋の父さんは、娘の婿が青虫やかたつむりになるかもしれないと思い、しょんぼり涙を流す。
娘さんはそんな父さんを慰めている。……というか、娘、イエスかノーか早く言えば、父さんもこんなに落ち込まなくてすむのでは。
花屋の父さんは、娘は人の子ですよ、と嘆く。
すると、それを聞いた青虫とかたつむりは、それなら大丈夫、と言い出す。
そう、彼らが求婚したかったのは……
花だったのである!
青虫はマーガレットに。
かたつむりはアジサイに。
それを聞いた花屋の父さんは、やにわに元気を取り戻し、
「マーガレットも アジサイも うちの だいじな はなだ。
むすめも どうぜん まかせとけ!」
……と、張り切り父さんになり、娘たちをよろしく頼むと嫁に出すことにしたのであった。
……花屋父さん、花が相手だと知ると切り替え早いな。
そうして、盛大な結婚式をしたとか。
めでたしめでたし……。
肝心の花たちの気持ちはないがしろにされてないか?と思うのだが、本文には書かれていないだけで、絵では花たちもまんざらではなさそうなので、ハッピーエンド…………なのだろうか?
話を楽しむ絵本
話を楽しむタイプの絵本だが、展開にちょっと無理があるというか、笑い話のようなのだが、笑いどころがちょっとわからない。娘のリアクションが他人事のようなのがちょっと気になるところ。
三人の父さんの張り切り具合は見ていて楽しい。
幼児、低学年向け。