あらすじ
お母さんに三つ編みをしてもらうのが好き。
これは、私とお母さんだけの時間。
でも、赤ちゃんが生まれたら、そんな時間もなくなるのかな……。
お母さんは、赤ちゃんの髪を三つ編みにするのかな。
なんだかそれはちょっと……いやだな。
そうだ。
私が赤ちゃんの髪を三つ編みしてあげれば、お母さんは赤ちゃんの髪を三つ編みしなくてよくなる。
そう考えた私でしたが……。
もうすぐお姉ちゃんになる少女の……。
かわいらしく繊細な絵が目に飛び込んでくる。
三つ編みをお母さんにやってもらう少女。
少女は、お母さんに三つ編みをしてもらうのが好きだった。
三つ編みの髪型になることが好きなのではない。お母さんに三つ編みを編んでもらう、その時間が好きだったのだ。
言葉はなくても、大切なコミュニケーションの時間だ。二人だけの、かけがえのない時間。
思えば、この時間が永遠に続くとは、彼女自身も思っていないのではないか。
その思いを肯定するかのように、お母さんのおなかの中には妹か弟がいる。赤ちゃんが生まれてしまったら、お母さんは赤ちゃんの髪の毛を三つ編みにするのかな。二人だけの時間が二人だけの時間でなくなってしまう。少女はそのことに少し否定的な気持ちになってしまう。
今まで独占していたお母さんが、そうでなくなってしまう──
それは、彼女ぐらいの年頃なら、受け入れがたい不安だろう。
でもそれと同時に、彼女は生まれてくる赤ちゃんに自分が三つ編みをすればいいのではと考えつく。新しい兄弟が増えるという期待と不安。それがよく現れている。
なんだか赤ちゃんの性別が女の子として話が進んでいくのだが、男の子だったらどうするんだろう……と無粋なことを思ったりもする。
今では生まれる前から性別がわかるからそれかな……。
三つ編みの練習をして、赤ちゃんがいつ生まれても大丈夫なように備える少女。お母さんがとられるんじゃないかという不安もあるのだろう。描かれる彼女はちょっと不安げだ。
でもそれも、生まれる前までの話。
生まれた赤ちゃんを見て、彼女は、ちょっとだけなら、お母さんが赤ちゃんを三つ編みしてもいいかな、と思う。
小さな命を見て、彼女はほんの少しだけ、お姉ちゃんの自覚が出てきたに違いない。
妹ができる少女の繊細な心の動きが描かれた絵本だと思う。
言葉すくなに、心の機微を描く
絵が繊細でかわいらしく、この繊細なテーマの絵本にふさわしい。
なにより少女がかわいらしい。
女の子向けの絵本だろう。男の子には向かない。
幼児向け。