あらすじ
ロビーは夏の間を島で過ごします。
島には、仲のいい友達のリンがいます。
毎年一度だけあえる友達です。
島についたロビーは、早速、リンと遊びます。
秘密の場所でテントをはり、秘密基地ごっこ……。
楽しい時間はあっと言う間にすぎ、明日はロビーが帰る日になりました。
帰りたくないロビーは……。
夏の奇跡
一夏の不思議な体験を味わう本だ。
外国の絵本だが、やはり夏のノスタルジーというものはどこの国にもあるのだろう。この『ふたりだけのとっておきのいちにち』は、そんな夏のノスタルジーを感じさせる不思議なお話だった。
毎年夏の間、島で過ごすロビーは、仲良しの友達リンと再会する。
二人は夏の短い間だけ、一緒に遊ぶことができる。リンは島に住んでいるからだ。
彼らは島につくと、早速、遊び始める。
秘密の場所で、秘密基地を作るのだ。これが結構本格的な作りで、読んでいるとわくわくしてくる。
しかし、楽しい時間はすぐに過ぎ去る。
もうロビーが明日帰るという日になって、ロビーはまだ帰りたくないと願う。そしてその夜、ロビーとリンは、こっそり寝室を抜け出してしまうのだ。
港に行くと、赤い帆の小さなボートが停まっていた。白いペンキで書かれていたのは、「アイランダー号」の文字。
「汽車がいっちゃうまで、あのボートにかくれていればいいわ」
帰りの汽車をボートに隠れてやりすごそうとの作戦のようだ。
子どもたちなりの抵抗なのだろう。実際やられると大騒ぎになるが……。いかにも子どもたちが考えつきそうな抵抗である。
だが、このアイランダー号、不思議なボートだったのだ……。
いつの間にか、海面を走り出したアイランダー号。
どこに行くのかわかっているかのように、迷いなく進んでいく。
二人は、夜明け頃、見たこともない島にたどり着いたのだった。
そこは、二人が作った秘密基地のような場所だった。
人の気配はなく、二人は楽しく遊んだ。リンはバラ色の巻き貝を見つけ、ロビーは大昔の矢尻を拾う。まるで夢のような島! 二人は夢中で遊んでいるうちに、とうとう夜に……。
二人は、丸一日、その夢の島で遊んでしまったのである。
夜になると、風が吹き始め、アイランダー号が流されそうになっていた。二人はあわててアイランダー号に乗り込む。
そして夜明け頃、二人は不思議にも、島の港に帰ってこれたのである。
丸一日、帰るべき日に遊んでしまった。だからきっと、すごくしかられるだろう……と足取り重く帰ってみれば……。
なんと今日が帰る日だと言われる。
ぽかんである。
一日遊んでいたはずなのに……あの夢の島で遊んだ一日は、幻の一日になってしまったのだ。
あれは夢だったのか? 幻だったのか?
しかし、あのとき拾ったバラ色の巻き貝と、大昔の矢尻はそのまま残っている。
夢じゃなかった。でも、現実でもなかった。夏の起こした奇跡だ。
とっておきの一日。
夏と、奇跡はよく似合うと思う。
それは私が、夏という季節は、ノスタルジーとミラクルがまじりあって、夢を見せてくれると信じているからだろう。
文章の量がとても多い
絵本だが、文字は小さく、文章の量がとても多い。児童書並の文章の多さである。
低学年からが対象だろう。