あらすじ
おとなと子どもが歩いています。
おとなは、地面のでこぼこを見て、子どもに「つまずきますよ」と言う。
するとも子どもは「つまずいた!」。
ユニークな会話がおもしろい、幼児向け絵本。
宣言通りになってちょっと笑う
思わずクスッとしてしまう、幼児向け絵本。
五味氏ワールドが好きなかたは大いに和むだろう。そうでないかたも、クスッと笑ってしまうはずだ。
親子だと思われる二人が歩いている。
道にはでこぼこがあって、そこにさしかかるたびに、「つまずきますよ」「おちますよ」とおとなのほうが子どもにいう。
だから注意しなさい、という意味がこめられているのか、ただ淡々と予言しているだけなのか、絵の表情だけではわからない。だが、まるで予言のように、子どもは言われたとおりにつまずき、落ちてしまうのだ。
言われてもそのとおりになってしまうところが実に子どもらしくていい。落ちて怪我するよ、と注意した矢先に落ちて怪我するあれである。
「つまずいた!」「落ちた!」と子どもが言っても、「いったでしょ」と受け流すおとなの態度もおもしろい。飄々としているというか、空とぼけているというか……ユニークな距離感だ。
二人の仲はそれほどよくないのか?と思ってしまうが、それも最後のオチで印象が変わる。
階段つきの建物にのぼって、子どもは「おちますよっていってよ」とおとなに向かって言う。しかしおとなはこう返すのだ。「とびますよ」と。
それはつまり、あなたはとんで、わたしが受け止めますよ、という言外の意味が込められているように聞こえるのだ。その想像のとおりに、子どもはとんで、おとなはそれを受け止めている。
「いったでしょ」、字面だけだと分からず屋に向かって言いそうな言葉であるが、この絵本においてはちょっと違う。「いったでしょ」、おもしろい会話の切り口だ。
幼児向け絵本
文章の量は少なく、会話だけで話が進む。
読み方次第では、読み聞かせも映えそうだ。