あらすじ
アリスは、おじいちゃんから遠い国々の話を聞いて、自分の遠い国に行って、おばあさんになったら海のそばに住みたいという夢を抱く。
だが、その夢のためには、世の中をもっと美しくしなければならないという約束もするのであった。
おとなになったアリスは、遠い町に行き、図書館で働いた。
そして、頃合いを見て、彼女は遠い国へ旅を始めた。忘れられない出会いを体験し、そして彼女は海の見える家に住むことに決めた。
夢はほとんどかなったけれど、「世の中を美しくする」という約束は果たせていない。
彼女はどうすればいいのかと考えていたが……。
遠い国に行って、それから海辺の町に住むという夢
一人の女性の半生を繊細に描いた絵本、『ルピナスさん』。
語り手である「わたし」からすると、このルピナスさんは、大おばさんにあたるという。
「ルピナス」さんは、本名ではない。本名は、アリス・ランフィアスというようだ。
話は、彼女が子どもの頃、おじいさんと海辺の町で住んでいる頃から始まる。
おじいさんは、ルピナスさんに、遠い国々の話をする。
この話は、ルピナスさんの心に深く刻みつけられることとになったのだろう。遠い国々の話、そこで起きたいろいろなこと……ルピナスさんは、大きくなったら自分も遠い国に行き、おばあさんになったら
海のそばの町に住みたいという夢を持つ。
そのことを聞いたおじいさんは、夢をかなえるたためにひとつしなければならないことがあると言う。それは──
「世の中を、もっとうつくしくするために、なにかしてもらいたいのだよ」
なにをすればいいのかわからなかったルピナスさんだったが、おじいさんと約束する。
おじいさんが話してくれた遠い国々の話は、ルピナスさんの心の片隅に残り続けたのだろう。大きくなって、ルピナスさんは潮のにおいのしない町に住み、図書館で働いても、遠い国々のことが書かれてある本がたくさんある場所にいることを選んだ。
いつか海辺の町にすむ。
遠い国へ行って。
ルピナスさんは、南の島に行くことを決める。
南の島で、ルピナスさんは村長さん夫婦によくしてもらい、忘れられない出会いを果たす。
それからのルビナスさんは、さまざまな場所に行き、さまざまな出会いを果たした。
ルピナスさんは、遠い国々へ行き、忘れがたい出会いをするという経験をしていく。なんと行動力のある女性だろう。忘れがたい出会いは、ルピナスさんの中で、確かに息づき、一部になっていったことだろう。
遠い国々を見たルピナスさんは、そろそろ頃合いと、海のそばの家に住むことに決めた。子どもの頃決めた夢を、ルピナスさんは果たしつつあった。
でも……。
「でも、しなくてはならないことが、もうひとつある。世の中を、もっとうつくしくしなくてはならないわね」
そう、おじいさんとした約束。
世の中をもっと美しくすること。
でも、なにをしたらいいのかわからないルピナスさん。
しかし、ある日、気づくのだ。
ひょんなことで自分がまいた、ルピナスの種が芽吹き、花を咲かせていた……。しかも、自分の家から離れたところで。
風が、鳥が、種を遠くに運んでくれたのだ。
そのときルピナスさんは、世の中を美しくする方法を思いつく。
ルピナスさんは、花の種をたくさん注文し、村のあちこちに蒔いた。
そして、その花は見事芽吹き、きれいな花を咲かせたのだ。
ルピナスさんは、世の中を美しくすることに成功した。いろんなところできれいな花が咲いている、その景色の美しさ!
そう、その花の名前は、ルピナス。
この話を聞いた「わたし」は、大きくなったら遠い国にいって、帰ってきたら海辺の町に住む、とルピナスさんに言う。
ルピナスさんは、それにはひとつ、しなければならないことがあるのだという。
世の中をもっと美しくしなくてはならない、と。
「わたし」は了解する。
さて、「わたし」は、どうやって世の中を美しくするのだろう。
思いを馳せれば、その楽しみは、希望にも似ている。
優しく繊細だけど、壮大な女性の半生
優しくも繊細な文章でつづられながらも、壮大な女性の半生を描いた一冊。
文章の量は絵本にしてはとても多く、中学年向け。低学年だと集中力が続かないだろう。
読み聞かせは不向き。