あらすじ
滅んだと思われていたオオカミだったが、実は一匹だけ生き残っていた。その子どものオオカミは、仲間を捜して毎日うろうろしていた。
しかし、どこにいっても、なじめないしなじめるようにも思えない。
仲間にあこがれていたオオカミでしたが、最後は結局……。
独特でビターな一冊
滅びたと思われたオオカミだったが、本当は一匹だけ生き残っていた。
そのオオカミは、子どもだった。
オオカミは仲間を探して街の中をうろうろ……
……という、絵本にしてはわりと重たい雰囲気を漂わせる作品である。
このオオカミ、シルエットで描かれているため、表情が見えない。リアクションも少ないため、彼(あるいは彼女の可能性があるが)がなにを思ったのか、考えているのかは想像するしかないところがユニークだ。
オオカミは仲間を探して、ウサギばかりが住む街へ行く。だが、そこではオオカミの姿を見るとみんな逃げ出してしまうのであった。この様子では、会話すらできていないのではないか。逃げていくウサギたちに向かってか、オオカミは一言。
け
この一文字に込められたものはたくさんあって複雑だ。
つまらないおもしろくない、なんだよやってられるか──そのほか、様々な感情が凝縮されていて、深い。
ウサギたちに逃げられてしまったオオカミ、ウサギなんかごめんだと自分からその場を立ち去る。
そしてオオカミは、いろんな動物に仲間はいないか、仲間になれないかとうろつくのだが、オオカミを受け入れる動物たちはなく、ひとりぼっちのままだ。
最初は仲間がいていいな、とうらやんでいたオオカミだったが、どこにも入れない自分を自覚していくにつれ、次第に心境は変化していく。
建物の屋上に停められていた気球を空へと放し、オオカミはこういうのだ。
やっぱり おれは おおかみだもんな
おおかみとして いきるしかないよ
どこにも所在がなく、居場所もないオオカミ。
オオカミはオオカミだ。ほかの何者にもなれない、と悟り、心に刻んだオオカミは、一人で生きていく決心をしたのだろうか。
最後のオオカミの一言には、強がりのような、あきらめのような、ある種の切なさが込められているような気がしてならない。
け
どこにも帰属しないオオカミ。
風にのって飛んでいく気球は、しがらみを断ち切った暗示のように見える。寂しくて、切なくて、少し皮肉っぽい、オオカミの「け」。
オオカミはもう、仲間を探さないのだろう。
救いなのは、オオカミは自分は自分だから仕方ないと決めたとたんに、「ゆかいな きもち」になったということだろう。
そこまでシリアスに、悲壮にすべてをあきらめたわけではない。オオカミはなんだかんだといって生きていける。そんな楽観的な希望も感じさせる。切なさと希望と、寂しさが混ざりあって、ちょっとビターな気分になる一冊である。
ある意味少しおとなっぽい絵本
ある意味でおとな向けにも思われる作品。
テーマがおとな向けに近いからだろうか。好みが分かれる独特な世界観だろう。
読み聞かせはやりにくそうだ。文章量は少ない。
