あらすじ
ある国の王様は、とても気むずかしい王様でした。
王様のおさめる国は、冬はとても寒く、夏はとても暑い国。
王様は、三時のおやつに、暑いときは冷たいクリームを、寒い日は温かいクリームを食べるのが日課でした。
少しでもぬるかったら、王様は首をはねるぞと怒りました。
しかも王様は、毎日違う味のクリームを食べると決めていました。日曜日はストロベリー、月曜日はラズベリー、火曜日はバニラ……と。
このメニューを間違えると、王様はきっと怒るでしょう。コック長は、ずいぶん大変な思いをしていました。
ある夏の暑い日、三時のおやつが迫っているのに、クリームがちっとも冷たくならず、コック長は困り果てていました。
ぬるいクリームを持っていったら、きっと怒られるに違いありません。
コック長はどうなってしまうのでしょうか……?
アイスクリーム、王様のわがままでできる
一言でいうと、王様のわがままでアイスクリームができた、というお話。
児童書だがとても字が大きく、低学年向け。
ある王様は、暑いときには冷たく冷やしたクリームを、寒いときには温かくしたクリームを食べるのが好きだった。
アイスクリームのなかったころの話だ。つまり、冷凍庫というものがない。
だから、温かくする分には簡単だが、冷やすのは難しい。一生懸命クリームの入った器に水をかけても、キンキンに冷えることはない。だが王様は、冷たいクリームを食べさせないとおまえの首をはねるぞとコック長を脅すのである。
王様は事情とか当時の技術とか全く知らないでわがままを言うのだろうか。それとも暑いからイライラしているのだろうか。
しかも王様は、毎日違った味のクリームを食べる。一週間で決まった味を食べるのだが、これを間違っても首をはねられる。
コック長は、間違えないように、自分の娘の名前を一週間のメニューに合うように変更した。一番目の子の名前を、一日目に食べるストロベリー、二番目の子の名前を二日目に食べるラズベリー、というように。
逆にややこしくなるのではないかと思うのだが、それほどコック長は王様の機嫌を損ねないように必死なのである。
クリームがぬるい、冷たくしろなどと王様が無理難題を命令してくるのだが、なんだか幸運が幸運を呼んで、偶然にもアイスクリームができた、というお話である。その幸運が幸運を呼ぶところがお話のメインだ。
お話自体はめでたしめでたし、なのだが、王様の性格の悪さは改善されないので、何となく不満が残る。まあ、王様が手に負えないわがまま太郎なのはよくある設定だが……。
児童書入門
読み物としては安定した文章と内容で読みやすいが、意外性やわくわくを求めるのなら向いていない。
児童書入門書として、字の大きさを見るとおすすめだが、とてもおもしろい読み物かと言われれぱ疑問が残る。人を選ばない内容なので、男女問わず気軽に読めるところが強み。
低学年向け。