あらすじ
ある日、遊園地で、かんじ少年は、サカサマンにとりつかれてしまう。
サカサマンにとりつかれたら、思っていたことと反対のことをしてしまうのだ。
おかげで、かんじ少年は怖いと思っていたジェットコースターを十回も乗ってしまう。
それからかんじ少年の日常が変わった。
いつもだったら絶対しないはずの劇の主役に、自ら立候補したり、いじめっ子に立ち向かったり……
サカサマンのせいで困らされることになることもあったが、確かにかんじ少年の毎日は大きく変わったのであった……。
なんでも逆さにしてしまうサカサマンにとりつかれてしまった
カエルにマントをつけたサカサマンが、かんじという少年の口の中に入って、思っていることと反対のことをしてしまうという話。
「サッカサー!」
このかけ声とともに、かんじ少年は怖がっていたジェットコースターに自分から乗り、緊張するからイヤだと思っていた劇の主役に立候補してしまったりする。
勇気を出して、一歩踏み出せば未来が変わるというのがテーマなのだが、サカサマンが正義の味方というわけでもないところが珍しい。
サカサマンのせいで、心密かにあこがれていた女の子を傷つける言葉をを、思いとは裏腹に言ってしまうのだ。
かんじ少年は、サカサマンに出ていけと抗議するが、サカサマンは開き直っているのか、
「それなら、出ていけのさかさまで、ずーっと いっしょにいるよ。」
と居座ってしまう。
ここでかんじ少年は頭を働かせて、「ずっと一緒にいて」と言えば出ていってもらえるのでは?と思うのだが、そうはならない。
劇の主役をつとめることになったかんじ少年を妬んだいじめっ子のテツヤが、かんじ少年に難癖をつけにやってきたとき、殴られるのを察したかんじ少年は逃げようとするのだが、サカサマンのせいで逆のことをしてしまう。テツヤを殴ってしまうのだ。
その上、挑発しながら逃げてしまうという有様……
いじめっこに立ち向かえたというように見えるが、よく考えてみると、手を出したのはかんじ少年のほうだし、挑発しながら怒りを油を注いだのはかんじ少年だ。
……なんだか、あまりいい変化ではないような気がする。
サカサマンは怒って追いかけてきたテツヤの体に入り、かんじ少年を殴りかかろうとしているところを逆さにして、自分で自分を殴らせて撃退してくれる。
(てきなのか、みかたなのか?)
なぞだらけのサカサマンだ。
本当にそのとおりである。
正義の味方とはいえないのがサカサマンだ。絵ではヒーローのような格好をしているのに。
そして、かんじ少年は、傷つけた女の子に素直に謝るのだが、ここではなぜかサカサマンの効果が出ていない。絵では、サカサマンが黒板の上からかんじ少年を見守っているふうに描かれている。今はとりつかれていない、ということなのだろうか。
最後に、かんじ少年は女の子をかばってテツヤの本気のパンチを受けるたり、台詞をちょっと間違えつつも劇を成功させたりして、今までの彼とは違った方向に成長を果たす。これはみんな、サカサマンのせいではない。彼が自分で、歩んでいった結果だ。
サカサマンにとりつかれた人は、なんでもさかさのことをしてしまう。よいことも悪いこともだ。
でも、サカサマンは大事なことを教えてくれた。
ちょうせんすることが だいじなのだ。
かんじ少年の場合、そのきっかけがサカサマンだっただけで……。
サカサマンは、テツヤの件からかんじ少年にとりつくのをやめてしまった。なぜなのかと尋ねるかんじ少年に、サカサマンは言う。
「まえのきみと いまのきみは ちがう。
まるで 北きょくと 南のしまのよう。
きみは じぶんで サカサマになったんだ。
サカサマンは バイバイだ。」
つまり、サカサマンは、人が変わろうとするきっかけとなり、その人が変わったら、役目を終えるということなのだろうか。
サカサマン自身は、良くも悪くもない。さかさにするだけなのだ。
引っ込み思案で自分から挑戦する勇気が出ない人にとりつけばよい方向に変わるが、元から挑戦することが好きな積極的な人にとりつけば……。あまり考えたくないのでこのあたりでやめておく。
人は、自分で限界をもうけがちだ。
これはできない、自分には無理だ……そう決めたのは、誰だろう。そう、自分であることが多い。
失敗することをおそれて、挑戦することもしない……。おとなになると、やってみようかと検討することも少なくなる。これはいろんな挫折や失敗を味わった上での行動なのだが、それによってチャンスを逃しているのではないかとも最近思う。
おとなはいろいろ事情が込み入っていて、簡単に挑戦しろとは言いがたいが、子どもなら、自分に限界を作らないでやってみてほしいと思う。失敗や間違いなど気にするな。この本はそう訴えている。
なぜサカサマンがカエルの姿をしているのか理由が分からなかったが、「カエル」が「変える」の言葉遊びなのかもしれない。
サカサマンは、その思いこみや自分で作った限界を越えさせてくれる不思議な存在だ。
オチがちょっといい話、みたいな感じで心に希望をともしてくれる。
「サッカサー!」
このかけ声が、読み手にも聞こえてきそうだ。
読みやすい文章で書かれた絵本
話を楽しむタイプの絵本で、本文は縦書き。
文章量はそこそこあり、低学年向けだろう。
