あらすじ
小人のマノーと、緑色の子豚のレーズンが一緒に住むようになって……
その中での心温まるエピソードを短編として収録した短編集。五つのお話が入っている。
ちょっとワガママでやんちゃなレーズンと、レーズンとうまく付き合っていくマノーの優しい物語。
小人と子豚の温かな同居生活
小人のマノーとも緑色の子豚、レーズンのほんわか心温まる短編集。
ひょんなことで、マノーは子豚と一緒に暮らすことになった。
子豚は、レーズンみたいにちっぽけだから、前にいた場所を出されたのだという。子豚をレーズンと名付け、マノーと二人、ささやかな生活が始まる。
なんといってもも物語全体を包む、優しい空気が心を癒される。
レーズンは子豚だからか、ワガママだし、自分勝手なところもあるのだけど、マノーはそれをうまく操って、このささやかな同居生活を維持していく。マノーのおかげか、読んでいるうちに、レーズンのかわいらしさを感じられるようになっていく。
マノーは友人のカラスとこんな会話をする。
(前略)カラスはいいました。
「こんな小さいこぶたのめんどうをみるのは、たいへんだろう。だれにでもできることじゃないよ。」
すると、マノーはただ、こういいました。
「ひとりですむのだって、らくじゃないさ。それに、だれかといたら、それだけで、たのしく時間がすぎるもの。」
マノーとレーズンの関係はとても不思議だ。
親子のようであって親子でない。親友同士かといえば違う。レーズンはマノーのことを「マノーちゃん」と呼ぶし、マノーの一人称は「ぼく」でマノーの性別も良く分からない、なんとも判断しづらい関係の二人だと思う。でも、彼らは絆のようなもので、しっかりと結ばれている。
お互いがお互いを好ましく思っているから、一緒にいたら、楽しく時間が過ぎていくのではないか。
本も終盤のほうになると、レーズンのかわいさが引き立つようなお話が登場する。
「〝ほんもの〟のみどりのこぶたのはなし」では、レーズンがあまりにかわいらしくて、見ていて心が和んだ。
マノーのことを思って、雪の残る外に、カボチャの種を植えるレーズン。
寒い季節にカボチャの種を蒔いてもダメなのだが、マノーはあえてそれを指摘しない。暖かくなったら、種をまきなおして、芽が出てきたらレーズンに「ぼくのために蒔いてくれたんだね」と言おう、と心に誓う。
このマノーの優しさ。レーズンの優しさ。お互いを思いやっている優しさが、じんわりと心に灯る。
荒んでいた心が、ほぐされるかのような、ささやかでかわいらしいお話ばかりだ。
疲れたおとなにも、おすすめしたい。
字が大きめの児童書
字が大きめの児童書。
中学年ぐらいが対象だろう。
全編を通して、ほんわりとした優しさが漂っているので、疲れたおとなにもおすすめしたい。