概要
アメリカにおけるハロウィンという行事の位置づけや、楽しみ方を分かりやすい言葉と分かりやすい文章でシンプルに紹介する本。
当然、日本のハロウィンとはまったく違う。一大イベントである。
アメリカにおけるハロウィンの重要さが、子どもたちの成長とともに語られるのがなんとも切ない。
読後、家族で行事を過ごすことのかけがえのなさを感じるだろう。
ハロウィンという行事を楽しむとき
日本でも少しずつ定着しつつあるハロウィン。
実はこの本はハロウィンの季節に取り上げたかったのだが、時間がなくてこんな時期になってしまった。
季節外れもいいところなのだが、読んでみて心に来るものがあったので、取り上げておきたい。
本書の内容は、物語というより、アメリカのハロウィンの様子の紹介、といったものだ。
オバケも悪魔も出てこない。ただ、ハロウィンというこの不思議な行事について、アメリカではどんなお祭として定着しているかを分かりやすい言葉と文章で紹介してくれる。
アメリカのハロウィンは日本と違って、かなり大々的に催されるようで、子どもたちの仮装にも気合が入っている。
そして家を回ってお菓子をもらうのだとばかり思っていたが、その前に子供たちの仮装が何かを当てるのが慣わしなのだそうだ。
世事に疎いと当てられなさそうで難関だ。
ハロウィンは子どもたちだけのお祭かといえば違う。
ハロウィンは地域交流のお祭なのだ。相応の年齢の子がいる家族は、一家全員でハロウィンを楽しむ。
ハロウィンのために、家をデコる一家もある。ハロウィンが一大イベントになっているのがよく分かる情景だ。
そんな楽しいハロウィンだが、永遠には続かない。
子どもは成長していく。お菓子を貰える期間は限られている。
あと何回、ハロウィンができるか。あと何回、ハロウィンで仮装できるか……
子どもたちは、もらえなくなるときに気づく。
それを、アイスクリームが溶けてしまうように、と本書は表現している。
青トンボの仮装を家族全員でしたロックが、心からハロウィンが大好きだと思うのは、ずっと先のことだという。
でも、ロックが本当に、ハロウィーンって大好きだ、って心から思うのは、ずっと先のこと。
大学生のロックが、青トンボの家族になった時の写真を、遠い町で見る時のこと。
でも、そんなのは、ロックはまだ知らない。
しかしロックはいずれ、気づくのだ。
アイスクリームが溶けてしまうように、ハロウィンでお菓子をもらえる年齢を迎えてしまうことを。
今は、気づいていないけれど。
それはなんと、切なくて、短い間の魔法だろう。
過ぎ去れば、ほんの一瞬の夢だったかのような……。
アメリカに根付いたハロウィンという行事の不思議さと切なさが、心に直接伝わってくるようだ。
青トンボの仮装をしたロックが、パパの肩車で、空を飛べると信じているうちは、ハロウィンの魔法はまだ続く。
そのことを、なんと切ない文章で表現しているのだろう。
限られた間にだけ効く魔法。
アイスクリームが溶けてしまう前に、おとなは彼らに何をしてあげられるだろう。
徹夜で衣装作り?
仮装を言い当ててあげる?
仮装している子にお菓子をあげる?
私だったら──。
そんな素敵な行事がアメリカにあるなんて、少しうらやましいと思った。
アメリカでのハロウィンを紹介する本
アメリカでのハロウィンを紹介する本なので、あまり物語性はないのだが、子ども時代のハロウィンが終わってしまうことを、胸を打つ文章で描いている。
これは子どもを持つ保護者の胸を打つだろう。
ぜひ、小さな子どもを持つおとなのかたに読んでみてほしい一冊。
子ども時代は短い。あと何回行事を楽しめるだろう。だから、これからの行事を大切にしよう。そう考えてしまうはずだ。
対象は、中学年から。
むしろ、内容的におとな向けかもしれない。この郷愁に似た思いは、おとなにならないと分かりにくいのではないだろうか。
