あらすじ
パン屋さんのブタさんは、ブタという名前のおじさんです。
ブタさんは、毎日作ったパンを車に並べて、一丁目、二丁目、三丁目と順番に売りに行きます。
「ブタ ベーカリー」のパンは人気。
いろんな人が、いろんなパンを買いに来ます。
ある日、ブタさんのところに、正体不明の誰かがやってきて、四丁目までしっぽパンを売りに来てほしいと頼みに来ます。
四丁目はないはず……とブタさんは言うのですが、その誰かは、四丁目の行き方を教えて丁寧にお願いして去っていきました。
ブタさんは、しっぽパンをたくさん作り、言われたとおりに四丁目を目指すのですが……
四丁目にパンを売りに来て欲しいと頼んだ誰かって、一体誰……?
いろんなパンが登場!
なんとも不思議でほんわりした読後感のある絵本。
パンやさんです。
なまえは、「ブタ ベイカリー」もちぬしは ブタさん。
でもブタでは ありません。ぷっくり ふとった おじさんです。
パンやさんだけど、おみせはありません。
……という冒頭から始まる『ブタベイカリー』。
ブタという名前の人間のおじさんが主人公なのは分かったのだけど、一読したとき、頭の中が「???」。
パンやさんだけど、お店はないってどういうこと???
そして庭には、ふくらしこがなる木が生えていて、いろんな形にふくらむ、ふくらしこがなるのだそう。
ブタさんはこの木と一緒に体操をしたり、お話を聞かせてあげたりしているのだそうな。
ブタさんは朝早く起きて、パンを一生懸命作る。
いろんな形のパンを作る。
ボールパン、リンゴパン、チューリップパン、くつパン、でべそパン。
それから絶対に忘れてはならないのが、ブタのはなパンとブタのしっぽパン。
……でも、お店はないのに、作ってどうするの……?
パンを作って、他の店に卸すのだとしたら、パン屋さんというよりパン工場……
そうして、ようやく、「ブタ ベイカリー」のお店の正体が明らかに。
「ブタ ベイカリー」のお店は、車だった!
「おみせはありません」という表現に矛盾があるような気もしなくもないけど、移動型パン屋さんを営んでいるということだったわけです。
そうして、ブタさんは、車で、一丁目、二丁目、三丁目と順番にパンを売っていく。
人気は上々、いろんな人がいろんなパンを買っていく。
ここでどんな人がこんなパンを買った、という結構細かい描写が入るのだけど、そのため絵本としてはかなり多めの文章量になっている。
買いに来た人と関連のあるパンが売れていくのが面白いところ(たとえば、アナウンサーはマイクパンを買ったとか)なのだけども、いかんせん、一丁目二丁目三丁目と買いに来る人が多すぎて、ひとつひとつ楽しむのにちょっと飽きてしまう。
べたべたパンのくだりも何故毎回入っているのか、私にはちょっと意図が読み取れなかった。最後まで読むと、ブタさんはべたべたパンを売りたくなかったのかな?とも受け取れてしまう(そんなことはないと思うが…)。
ふくらしこの木も、最初に登場したのみで物語の本筋に関係してくることもなく、魅力的な設定なのに使わずにいるのはもったいないような気がした。
絵本としては、全体的に冗長な印象を受ける。
児童書の短編として収録されていそうな話の印象。
後半、四丁目までしっぽパンを売りに来て欲しいという依頼を受け、ブタさんはたくさんのしっぽパンを作る。
しっぽパンをたくさん作ってほしい、という依頼で依頼主の正体は大体想像がつくのだけど、ブタさんのパンをみんながおいしそうに食べるところを見て、ほんわかした気分になる。
お代のほうは……なんて野暮なことを考えるのは、おとなになってしまったからだろうか。
絵本にしては文章の量が多め
個性的で愛嬌のある絵と、数々のパンが登場するので、パン好きにおすすめしたい絵本だが、絵本にしては文章量が多め。
低学年から上が対象だろう。
文章の量が少々多いので、読み聞かせすると、思った以上に時間をとられるかもしれない。
スキマ時間の読み聞かせには向いていない絵本である。