あらすじ
野良犬の白い犬、ワッグルズは、ものをくわえるのが大好き。
あるとき、デパートに入り込んでしまい、偶然、目の前に転がってきた帽子をくわえると……デパートの店員に見つかってしまいました!
「どろぼう!」
あわてて帽子を放して逃げ出すワッグルズ。
しかし外にいた「いぬとり」のおじさんが大きな網を手に、ワッグルズを追いかけてきます。
ワッグルズは急いで路地裏に逃げ出し、石炭の詰まった箱に飛び込みます。
しばらくしてから箱から出てみると、いぬとりのおじさんが、近くにいた男の子に尋ねています。
「白い犬を見なかった?」
大変です。
ワッグルズは見つかってしまうのでしょうか……?
賢い犬のワッグルズ
犬のワッグルズが主人公の、痛快な物語。
ワッグルズを、「犬とり」のおじさんが追いかけて捕まえようとする。
読み終わったとき、ワッグルズはデパートで悪戯して大騒ぎになったので、てっきり「犬とり」のおじさんはデパート関係のおじさんだと思っていた。だが、あとがきを読むと、それは違うようで、今でいう、保健所のおじさんだったらしい。
つまり、捕まれば施設に入れられるか、処分されるか……という、コミカルな内容のわりに、深刻な内情が横たわっていたのである。
ワッグルズは賢い。機転も利く。
追いかけてくる「犬とり」のおじさんの追跡を、自分の体の色を変えるということで切り抜けていく。
元は真っ白なワッグルズ、ちょっと黒く汚れたら黒犬になるし、ぶち模様の犬にだってなれる。
犬とりのおじさんを煙に巻く彼の目は、いたずらっぽく、遊んでいるようにも感じられる。
この本で一番面白いのはそこで、ワッグルズがいろんな色や柄の犬になることで、おじさんの目をかいくぐるというところである。
ワッグルズが炭で黒く汚れたら、おじさんは仕方なく、炭で汚れた黒い犬を追うことにする。ワッグルズはすばしっこく、捕まらないようにするりするりと逃げていく。
身体の色を変えて、おじさんの目をごまかしているワッグルズ。最初読んだとき、おじさんはワッグルズが身体の色を変えていることに気がついてるのでは……?と疑っていたのだが、その疑惑は最後の最後で明らかにされる。
おじさんは、白い犬、黒い犬、ぶちのある犬……と、ワッグルズが変身した犬をそれぞれ別の犬だと思っていて、いまだに探しているのであった。
やっぱりぱっと見だけでは、犬は判別できないもののようだ。……確かにそうである。確かにそうだが、ワッグルズにとっては好都合。
しかも、ワッグルズはすでに野良犬を卒業してしまったわけで──犬とりのおじさんは、実体のない彼ら(ワッグルズが変身した姿それぞれ)を探し続ける羽目になる。
野良犬ワッグルズが、おじさんの手からうまく逃げていく過程が楽しい。
ワッグルズに感情移入して読むと、はらはらドキドキが楽しめる。
「犬とり」のおじさんは犬を捕まえるのが仕事のため、非常にしつこく犬を追いかけてくる。しかも、どの犬でもいいから捕まえてやるという仕事熱心ぶりだ。彼はただ職務に熱心なだけで、性格が悪いわけではないのだが、ワッグルズに感情移入していると、どうしても意地悪そうに見える。まあ、捕まれば、保健所につれていかれるので、そう優しい目で見守ることは難しいが。
ワッグルズは賢い犬だ。
ちゃっかりと、野良犬を卒業したところには感心してしまった。
結末を予想して、行動していたとしたら、彼は大変な世渡り上手ということだろう。
……しかし、そんなに賢い犬が、どうしてデパートで帽子をくわえるという失態をやらかしたのか。
やっぱり、ものをくわえるという抗いがたい習性には敵わなかった、ということだろうか。
文字も大きい、読みやすい児童書
児童書だが、文字がとても大きく、読みやすい。
児童書の入門の入門書といったところだろう。
対象は小学校低学年。
読み聞かせする本というより、一人読みの入門書といった位置づけ。
しかし、ある程度の文章をまとめて読めるようになると、この児童書は少し幼いものになるだろう。
よって、中学年以上には向いていない。
