あらすじ
帰り道、ボールを投げていたのに、おせんべいを焼いているところに見入ってしまって、すっかりボールのことを忘れてしまった「ぼく」。
ボールは、屋根の上に干してあったせんべいとともにガラガラと落ちてきて……。
せんべい屋のおじさんはかんかんになって怒った。
「ぼく」はあわてて逃げ出し、路地裏のおばあちゃんの家に逃げ込む。
そこで、かきもちとしんこもちを食べて一息。謝る勇気が湧いてきた。
しかし、いざ謝ろうとせんべい屋に行くとおじさんが怖くて謝れない。どうしよう。
そこでぼくは、ボールだけを取り返すことにしたんだ……。
おせんべいの焼ける香ばしい匂いが漂ってきそうな……
なんとも古き昭和の香りのする、懐かしさを感じられる一冊だ。
おせんべい屋さんの前でボールを投げてしまった「ぼく」。
屋根の上にはせんべいが干してあったから大変。
ガラガラとせんべいが落ちてきて、おせんべい屋さんのおじさんはカンカン。まあ怒って当然だから仕方ない。
しかし、おじさんのあまりの迫力に、思わず逃げ出してしまう「ぼく」。
路地裏にあるおばあちゃんの家に逃げ込み、そこでかきもちとしんこもちをご馳走になって、謝る勇気をもらう。
このおばあちゃん、てっきり血縁のあるおばあちゃんかと思ったけれど、もしかしたらご近所さんのおばあちゃんなのかもしれない。
だとしたら、いきなり飛び込んできた「ぼく」にかきもちとしんこもちを振舞うなんて、懐の広いおばあちゃんである。
せんべいを外で干してあるところを私は見たことがないのだけど、今も屋根の上でせんべいを干したりするのだろうか。
謝りにいこうとする「ぼく」だが、おじさんが怖くてなかなか謝りにいけないところ、見ていてほほえましい。
でも、悪いことをしたから謝る、という気持ちがあるのはすばらしい。
……すばらしかったのだが、おじさんが怖いので、「ボールだけ取り返す」に行動をシフト。もちろんダメなんだけど、これも実に子どもらしくていい。
結局、バレてお母さんに怒られて、おじさんにも怒られて……。
ここで話は終わらない。
「こわすのと つくるのじゃ おおちがいなんだぞ、ぼーず」と
おじさんが こわいこえでいった。
「まじめに やるのよ」きびしいこえで
かあさんが いった。
そう、干してあったせんべいを台無しにしてしまったぶん、「ぼく」は生地の型抜きや、醤油塗りをきちんとさせられることになるのだ。
わざとやったことじゃないにしろ、謝ってそれで済むわけではない、ということである。
これはこれで、正しい教育であると思う。「壊すのと作るのじゃ大違い」なのだ。
せっせとおせんべい作りに取り組んだ「ぼく」は、おじさんの言葉がよく分かったことだろう。
一生懸命取り組んだ「ぼく」に、おじさんはお土産に「ぼく」の作ったおせんべいをくれる。
厳しくするところは厳しくし、子どもが反省したら、怒りを引きずらない。おじさんのあり方は、とても理想的だ。
商品を台無しにされた上でのこの対応、いわゆる神対応ではないか。
おせんべい作りを手伝ったことで、「ぼく」は作る大変さを理解しただろう。
最後に登場するおせんべい茶漬け、食べたことがないのだが、とてもおいしそうだ。
一度、試してみようかと思う。
おせんべいがおいしそう
個性的な絵で描かれたおせんべいはとてもおいしそうだ。
温かみのある絵柄が、このお話にとてもマッチしており、読み終えたあと、何だかホッとした気持ちになる。
おまけに、おせんべいの香ばしい匂いが漂ってきそうな気もしてくるから不思議だ。
低学年向け。
読み聞かせにも向いているだろう。
