あらすじ
町のケーキ屋さん、ロドルフォはお城に住むお姫様と出会ったが、お姫様のドレスの裾が大きく膨らみすぎていて、握手することもできなかった。
二回目お姫様と出会ったとき、反対側からもう一度握手しようと試みたが、やはりドレスの裾がじゃまで握手できなかった。
三回目、お姫様と出会ったとき、ロドルフォはドレスをよじ登って握手しようと試みますが……。
人と人が心を通いあわせるのに大切なこととはと考えさせられる絵本。
ケーキ屋さんとお姫様が出会ったら
小さな町のケーキ屋さんのロドルフォと、大きなお城に住むお姫様の恋の物語……と紹介したいところなのだが、恋の過程の直接的描写はあまりない。
キュンキュンするような恋を期待していると、肩すかしを食らう。
お話は、突然二人が出会ったところから始まる。
なぜ出会ったのか、その過程は謎だが、初めてであった日、二人は握手しようとする。
しかし……
お姫様のドレスの裾が大きく膨らみすぎていて、握手ができなかった。
二回目会ったときも同様で、手を伸ばすが、お姫様のドレス裾が膨らみすぎて手が届きませ……
……って、どんだけパニエ着てんだ!
三回目は、ロドルフォは姫のドレスをよじ登ろうとして、何度も滑り落ちてしまう。よって握手ができなかった……
お姫様、ドレスをもう少し人間用のサイズに変えたらいいのでは……?
四回目のお姫様は少し違う。このドレスが二人の間をじゃましているのではないかとようやく思い当たったらしく、今度は階段つきのドレスを着て、ロドルフォと会う。そして初めて、二人は手を取り合うことができたのであった。
階段つきドレスとは想像の斜め上すぎる……。
五回目にロドルフォに会うときは、裾の短いドレスを着た。
……って、ふつうのドレス持ってんじゃん!?
最初から着ようよ! 階段つきドレスとかキテレツな格好しないでさ!?
……そういうわけで、逢瀬を重ねる二人。
そして思いを通わせ、幸せに過ごす……。
めでたしめでたし。
……という話だが、お姫様のドレスの裾のあり得ない大きさが次第に小さくなっていくところや、二人の出会いはじめの頃のちぐはぐさは、人と心を通い会わせる過程で、自分を少しずつ見直していくという暗喩でもある。
まあ、その、ドレスの裾にその意味を持たせるところはいろんな意味が隠されていると邪推しそうだが……。
誰かと心を通いあわせるためには、自分のことも見直していかなければならない。ドレスの大きな裾のように、訪れてくれた人を拒絶すれば、握手もかなわない。お姫様のドレスの裾は、心の殻を表現しているのだろう。
二人がうまく幸せになるには、お互いのことを思って寄り添っていかなければならない。心を開いていかなければ幸せになれない。
この絵本には、そんなメッセージが隠されている。
でもやっぱり登らないと握手できないほどの大きなドレスの裾って、絵面的に斬新だよなあ……。
タイトルには「あまくておいしい」ってあるけど、お菓子はほとんど出てこないし……。
示唆していることに気づけたら
本書に描かれたメッセージに気づくことができれば、この絵本の評価も変わるでしょう。
気づかないでそのまま読むと、ハチャメチャな絵本に映ってしまいます。
ただ、恋愛の機微というか、人間関係の機微について考えるには、中学年ぐらいになりそうです。低学年、中学年向けでしょう。
読み聞かせもできますが、活発な子どもの中には興味が持てない子も出てくるでしょう。