あらすじ
ある日、新聞社に勤めていたプレーゼルさんが、「サンタクロースはいない」らしいということを耳に挟み、それを新聞に載せてしまった。
他の新聞もそれをまねて、「サンタクロースはいない」と載せてしまったから大変。
みんながサンタクロースはいないらしいという話ばかりするようになりました。
それを遅蒔きながら知ったサンタクロースたち。
自分たちがいないことにされていて、腹が立つやら悲しいやら。
世界各国のサンタクロースを集めて会議を開き、出した結論、それは──!
「サンタクロースはいない」
ひょんなことから、このニュースが広まってしまって、みんながサンタクロースは存在しないのではないかと疑いはじめる。
それを遅れて知ったサンタクロースたちは、自分たちの存在を否定されたことに憤り、胸を痛めた。
そして世界中のサンタクロースが集まって会議を開き、この事態をどうするのか話し合った。話し合った結果、出された答えは──
サンタクロースの仕事を放棄して南太平洋にバカンスに行く!
年に一度しかない仕事を放棄して南太平洋に……サンタクロース、本当にいいの、それで!?
世界各国のサンタクロースが集まって出した結論がそれとは……サンタクロースの抱える別の闇が見えてきそうで何とも言いがたい。
まさに、本のタイトルの通り、サンタクロースがすねちゃった!である。
そんなすねちゃったサンタクロースを何とかしようと立ち上がったのが、クルト少年。
郵便局でサンタクロースが仲間に書いたクリスマスカードを(いけないことだとは知りながら)盗み見るという方法でサンタクロースの存在を確信したクルトは、「よし、サンタクロースを連れ戻すぞ」と決意。その行動力のある姿はすばらしいと思う。ただ、「サンタクロースを連れ戻しに行ってきます クルト」だけの置き手紙だけだと絶対家の人は心配すると思うが……。
すねたサンタクロースたちが南太平洋でバカンスしているので、南太平洋に行きたいクルトは、全財産1050円をもって港へ向かう。1050円という金額が妙にリアルだ。
結局、お金が足りなくて船のコックの手伝いとしてじゃがいもの皮をむき続ける羽目になるわけだが……全くすねちゃったサンタクロースのためにとんだ苦労である。
果たして、南太平洋でバカンス中のサンタクロースを説得するクルト。
すねた根性のサンタクロースは、「自分たちがくるのをみんな待っているのか」とクルトに確認する。クルトは「あたりまえだよ!」と断言するが、本文中には他の子がサンタクロースを待っているという記述はないのだが……はて。サンタクロースの置かれている現実はさほど変わっていないような気がするのだが……?
まあ、クルトの「あたりまえだよ!」という言葉にあっさり説得されたサンタクロース、急いで仕事に戻る。もはやクルトとサンタクロースたち、どっちが子どもかわからない。
南太平洋でくつろぐサンタクロースの絵は、失礼ながらおかしな光景で思わず心の中で笑ってしまった。くつろぐサンタクロースに、腰に手を当ててお説教モードのクルト少年、まるでお母さんである。
そんなこんなで無事迎えたクリスマス、クルトの苦労のおかげで迎えられたことは誰も知らない。
そもそも、サンタクロースがすねちゃったなんて、いったい誰が信じてくれるだろう。「サンタクロースはいない」という話がデマだったというほうがまだ信じてくれるだろう。
しかし、クルトは感謝を求めているわけではない。
サンタクロースはいるんだとみんなに知ってほしい純粋な気持ちがあるだけである。サンタクロースの実在をはっきり知ったクルトはとても嬉しそうだ。
クリスマスシーズンに読みたい一冊
低学年が対象のこの絵本、クリスマスシーズンには最適である。
絵本としては文章量が多く、読み聞かせのほうが向いているかもしれない。