あらすじ
大金もちのフライ・ナンデモモッテル君は、その名前の通りに、大金持ちのナンデモモッテル家の一人息子。
ほしいものは何でも買ってもらえます。
しかし、彼は、自分が持っていないものがあることに気づいたのです。
それは七歳の誕生日、豪華なケーキも豪華なプレゼントも飽き飽きしていたフライは、召使いに「何でも持っているところを、あまりものを持っていないふつうの子に見せびらかして自慢してやると楽しいですよ」と言われ、おもしろそうだと思ったフライ君は、それを実行することにしました。
召使いは、あまりものをもっていない、ビリー・フツウ君に、フライの誕生日を一緒に過ごしてやってほしいと話を持ちかけました。
ビリー君は、了承し、フライの家へ、ヘリコプターで向かいましたが……。
なんでももってる君の持っていないものとは
まず、登場人物の名字が面白い。
何でも持っているお金持ちの一家の名字は「ナンデモモッテル」。
普通の家庭の子の名字は「フツウ」。
ストレートすぎて潔い。ただ残念ながら、名字が変わっているというだけで、頻出する名前のほうは特に変わっている名前ではないので、このインパクトも最初だけなのが惜しい。
ナンデモモッテルというだけあって、ナンデモモッテル家は大金持ち。その一人息子であるフライは、ほしいものは何でも買ってもらえた。
フライ・ナンデモモッテルはしあわせだ!
この子はなーんでももっている!
フライの両親はいつも忙しかったので、代わりにフライのほしいものを何でも買ってあげることにしていた。
なに不自由もなく、贅沢三昧。わがまま放題。フライは立派なわがまま坊やに育った。……さもありなん。
何でも買ってもらえるなんて、なんとうらやましい!
……と思ったものの、両親からはもの(ときには生き物も!)を買ってもらうことしかしてもらえないなんて、ちょっとかわいそうだな、とも思う。
ナンデモモッテル君は、自分は何でも持ってると思っていたが、七歳の誕生日にひとつだけ持ってないものがあることを知った、というところでプロローグが終わる。
ここまできて、何となく、持っていないものは何か、簡単に想像できてしまうのだが、本当にひねりもなく、持っていないものは想像したものだった。
フライが持っていないもの──それは友達だった。
結論が安易に想像できてしまって、どんな結末を迎えるのかについては、あまりわくわくしない。
ただ、フライが自分の持っているものを普通の男の子に見せて自慢しよう、という展開はおもしろい。完全にやっていることが未来の猫型ロボットがでてくる金持ちの髪型が不可解な男の子そのものだが、大丈夫、このフライ君、結構ナチュラルにわがままでいやな奴なのである。
しかしこの作戦も、想像したとおりに、普通の男の子、フツウ君はどんな宝物を見せてもうらやましがって悔しがることはない。
しかし、フライのなんでももってるぶりのスケールがはちゃめめちゃでおもしろい。石油王としか思えない。
個人所有のサファリパーク、ものすごい種類の犬を集めた建物、サファリパークを走る機関車、巨大観覧車……等々。常軌を逸したお金持ちぶりに感心するのを通り越えて、笑いがでてしまう。
でもフツウ君は感心はするが、うらやましがったりはしない。フライが何でもあげるから愛犬のピュンピュンをくれと迫られてもあげたりはしない。
予定調和のように感じるのは、自分がおとなだからだろうか。
フツウ君は何でも持っていない代わりに、想像力旺盛。ごっこ遊びや、フライの持っているものを自分ならこう楽しむ、などと披露する。
フライはそれに感心して、自分はそんな想像力がないということに愕然とする。
そりゃあ、コンピュータで制御された森や、ショベルカーの形をした誕生日ケーキをもらったりしていれば、想像力の育つ暇はないだろう。最後は、フツウ君が友達になってくれて、ものを与えればいいと考えているフライの父親にもの申す……という結末を迎えるわけだが、それも何となく予定調和のようで、おとなになってしまった自分にがっかりする。
フツウ君という友達を得たフライは、持っていないものを手に入れて、なんでももってる男の子になった、と締めくくりも安易に想像できてしまって印象に残るところがない。
これは本当に児童向けの本だ。おとなの自分があれこれいうのも無粋だろう。
何でも持っていても、友達というものは買えないものだし、大切なものだよ、というテーマだ。
あまり物語に触れていない年頃の子向けといえるだろう。
しかし、何でも持ってて、しかも友達まで手に入れたフライ君、なんとうらやましくて運のいい子なのだろう。
「あんまりものをもっていない、ごくふつうの子に、ぼっちゃんがもっているものを見せて、うらやましがらせてやるんです。(中略)見せびらかして、じまんするっていうのは、たのしいものですよ」
……とは、フライの召使いの言葉だが、読んだ自分は見事うらやましがって悔しがっている。何とも皮肉だ。
読みやすい文章なのだ児童書入門書として最適
おとなが読むと、ありがちな話に思えてしまうが、児童書の入門書としては最適。
文章がある程度読めるようになった低学年なら、一人でも読めるだろう。読み聞かせよりも一人読みにおすすめしたい。
挿し絵は多いが、本文内のイラストはみんな白黒。
親しみの持てる絵柄で物語りを彩っている。
