あらすじ
一年一組で今、一番ホットな話題といえば、「カレー男」。
頭に白いターバンを巻いた、髭がもじゃもじゃ生えたおじさんらしい。
家でカレーを作っていると、やってきて、「うまいカレーをさがす旅をしている。カレーをいっぱい、いただけないか?」と言って、カレーを乞うのだという。
ただの噂話かと思えば、そうではないらしい。
自分の家にも来た、私の家にも来た、という声があがる。カレー男は、カレーをいただくと、おいしいと感想をいうのだが、「でもこれは求めていた味とは違う」と言って、お礼に黄金のキャラメルを残して去っていくらしい。
一年一組はこの話で大盛り上がり。いつも話の中心にいる主人公の風太は、カレー男を見たことがないので、今回は話の主役をとられておもしろくない。いつもはおどおどしているクラスメイトが得意げになって話している。
カレー男の求めているカレーを作ったら、いったいどうなるのか?
黄金のキャラメルよりもずっといいものをくれるのか?
話の中心になるためには、カレー男の気にいるカレーを作るしかないと考えた風太は……。
謎のカレー男、あらわる!
カレーは好きですか?
そうですねえ、そんなに大好きってわけじゃあないんですけど、たまに無性に食べたくなるっていうか。辛さはもちろん辛目で。具? 鳥が一番かな……シーフードも好きですけど。
いや、別にそんなカレーが大好きっていうわけではないんですよ。でも、たまにどうしても食べたくなる時があってそれだけなんですけど……。
……カレーが好きな人って、多いですよね。
食べ物をテーマにした連作のひとつ、『カレー男がやってきた!』。タイトルのとおり、本書はカレーをテーマにした内容になっています。
カレー男、どう考えても不審者なんですが、彼にカレーを乞われるとなぜだかOKしてしまう。家の人すら「どうぞ」と言って家に招き入れてしまうのだから、カレー男はカレーの精か何かなのかも……。
しかし、結局、彼がなぜ、カレーの味を求めているのかは謎のまま……。ましてや正体が語られることもなく、どこからきてどこに帰るのかも謎……。
最終的に、風太はクラスの人気を取り戻すため、またカレー男に「求めていた味だ」と言わせたくて、カレーを手作りしようと思い立ち、カレーを作る。
ポテトチップスを入れたり、チョコレートを入れたり、バナナをいれたり……最初はカレー男に「求めている味だ」と言わせるためとか、クラスの人気を取り戻したいとか、下心満載だった風太。しかし、カレー男の好きそうな隠し味を考えているうちに、いつの間にか一生懸命カレー男に喜んでもらおうと料理していることになっていて、これが「人に料理を作ってあげる」という基本なんだよなあ……と思いました。
カレー男の求めている味のひとつは、「いっしょうけんめいにつくった味」だったというもの。
見事条件を満たした風太が手にしたものとは……
……もらってどうするんだろう、これ?
カレー男は謎のままだし、もらったものの用途も謎……。
正直、金額的に価値があるかと言われればそうでもないものだし、持っていることが名誉かといえば……??? そもそも、カレー男が何なのか謎のままだしなあ……。
でも、こういう、よくわからないものをくれるっていうところが謎のカレー男っぽくていいですね。逆に、金目のものをくれたら、謎のカレー男の魅力が台無しになってしまうような気がします。
オチもまたカレー男らしくひょうひょうとしていて、思わずくすり。
本当、謎のカレー男でした。
カレーという料理は、ルーを使うとわりと簡単にできるからか、家によってそれぞれ違うアレンジが施されていたりして、おもしろいですよね。
本書でもそれに触れていて、いろんなカレーの名前が出てきます。海鮮カレー、野菜カレー、キムチカレー、オムライスカレーなど。
食べてみたくなる、と風太は本書で言っていましたが、確かに人の家のカレーって食べてみたくなりますよね。
「食」っていうのは、ただエネルギーを補給するためだけのものではなくて、「楽しみ」だったり「コミュニケーションのきっかけ」だったり……
『カレー男がやってきた!』は、「食」の持つ楽しさを伝えてくれる一冊でもありました。
カレー男は、作った料理に「おいしい」と言われたらとてもうれしいことも教えてくれたのかも。
ところで、あなたの家のカレーは、どんなカレーですか?
食べること、作ることに興味をもてるように
豊富な挿し絵と、身近な料理「カレー」を取り上げた内容、と親しみやすい児童書、『カレー男がやってきた!』。
巻末には、カレー簡単な歴史と、カレーの作り方が収録されています。
実際にカレーを作ってみたくなる子が出てくるかもしれませんね。
低学年向け。
挿し絵はカラーとモノクロが混在。
食育の一助となる一冊です。