あらすじ
おなかがすきすぎて、倒れそうなマカンバーは、食べ物を探して戸棚や冷蔵庫を漁りました。
すると、冷蔵庫の奥から、ソーセージが一本、出てきました。
マカンバーは、ソーセージを一気に半分、食べた。飲み込むのと同時ぐらいに、姉がやってきて言いました。
「ソーセージは肉よ。肉を生で食べると死ぬのよ!」
マカンバーのおなかが、痛くなってきました。
ああ、これって、もうすぐ死ぬっていうことなんだ──
もっともらしいおねえちゃんの理屈と……
おねえちゃんってやつはろくでもないな(全国の姉に失礼)という感想ですべてを言い表している、絵本『マカンバー・マギーがたべたソーセージ』。
偏見でしょうか、外国の児童向け絵本や児童文学で年の離れた姉や兄は結構意地悪だったり、意地の悪いいたずらをよく仕掛けてくるような気がします。もちろん、そればかりではないのは知っていますが、今回の『マカンバー・マギーがたべたソーセージ』も意地の悪い嘘をついてマカンバーを翻弄する姉が出てきます。
おなかがすいて仕方のないマカンバーは、冷蔵庫を漁って、一本きり残っていたソーセージを見つけだし、そのままかじってしまいました。
それを見かけた姉が、「ソーセージは肉。肉を生で食べると死んじゃうのよ!」と、本当にもうもっともらしい理屈をこねて、マカンバーを脅かします。
脅かすだけ脅かして、フォローしない姉。
わりとひどい。
もうすぐ死ぬんだ……とショックを受けるマカンバー。おなかが痛くなってきて、ますますおびえます。死ぬならベッドの上がいいと自室に戻り、ベッドの上で泣き出します。……姉さん、少しフォローしてあげて!
色彩が全体的に暗く、怖い印象を受ける絵柄なだけに、「まさか死ぬわけが……」と思いつつも、「ひょっとしたら……」という不安がよぎります。たぶん、作者も意図して暗い絵柄を選んだのでしょう。
結局、ソーセージは生でも食べられるソーセージだったとお母さんが教えてくれるのですが、この言葉がなかったら、マカンバーと一緒に不安と恐怖を感じていたままだったでしょう。
生でも大丈夫と教えられたときはほっと安堵すると同時に、姉への「だまされた!」という怒りと、終始暗い絵柄と不吉な小物を書き込むことで雰囲気作りにつとめてきた作者への「かつがれた!」という苦笑がこぼれます。
本当にもう、表紙から怖そうな雰囲気を醸し出してきて、「よくもやってくれたなー」という感じです。最初、怖い話の本かと思っていたので、思えば最初から作者にだまされていたわけです。ハハ。
そして最後には、おなかがすいたからといって、冷蔵庫を漁ったり、いろんなところをひっかき回したりしないことと、他の人──特にお姉ちゃんやお兄ちゃんを信用しないように、と教訓を教えてくれます。教えてくれますが、一番読者をだましたのは作者じゃないでしょうか……。
これはやられた。
もう笑うしかありません。
今度おなかがすいたら、まっすぐお母さんのところにいきましょう、という締めくくり。またこのページが意味深長な怖い感じの絵なのが憎い。
まさか、それともほかの解釈が……? ……いや、それはなさそうな気もするし……。この困惑も作者のねらいだとしたら……。
本全体でどっきりを仕掛けられたかのような気分です。マカンバーもそんな気持ちだったのでしょう。
どっきり大成功と言わざるをえませんが、……うーん、なんか悔しい。
意味ありげな絵と全ページ通して雰囲気満点な怖そうな絵本
怖そうなイメージの表紙と違って、中身は姉のいたずらが引き起こしたあれこれのお話。
タイトルからして、なんだか呪われたソーセージを食べたように誤解しますが、ソーセージはふつうのソーセージ。
内容からして、低学年向けでしょう。
読み聞かせを考えているなら、雰囲気たっぷりに読むのをおすすめします。雰囲気と話の落差がこの本の一番の魅力です。
