なおみはいつもわたしのそばにいた。
わたしが生まれるずっと前から。
みずみずしい少女が、人形とすごした短いひととき
「なおみ」という名前の人形と、「わたし」が過ごした短いひとときを、写真とともにつづっていく一冊。
なおみと過ごす少女時代。人形のなおみは顔の角度によって、しかめ面をしているようにも、笑っているようにも見えます。人の形を模した人形。だからでしょうか、得も言われぬ魅力を放っています。それはただ綺麗や可愛いといった次元のものではなくて、圧倒的な存在感とともに心を虜にする魅力。
その魅力は、単に人の形をしているという理由だけではなく、彼女の中に蓄積された、「少女たちと過ごした時間」が魅力となって放出されているのかもしれない。
なおみは「わたし」には見えない遠くを見て、遠ざかる足音を黙って聞く。
少女はなおみの中に友情を見、ともに眠りながらも嫌い、仲直りをする。「わたし」にとってなおみとは、究極の分身であり、最も親しい友人、親友。
だが、その蜜月も永遠には続けてはいけない。
みずみずしい少女の輝きが他の光へ変わっていくとき、少女は「なおみ」を一度殺さなければならない。それは無自覚に、避けられない悲劇として嘆き、反面、実は能動的に。
「なおみ」は少女の心の中にいる
写真の角度によっては人形の「なおみ」がとても生々しく、生きている少女のように見えて、人形好きの私の目にも不気味に映ります。それが、人形の「なおみ」の抱えた蓄積された「何か」なのかも。扉の時計の写真と、奥付前のページの時計の写真が意味深です。
写真集の体も見せるこの一冊、おとなが見ると様々な解釈をしたくなるでしょう。ややもすれば不気味にも見える内容、コアなファンもついているようです。
人形遊びをしたことのある女性なら、心の中に「なおみ」がいたかもしれません。「なおみ」は少女の心の中でほんの一時だけ息を吹き返し、そして死ぬのです。
この絵本の最後をどうとるかは、読み手次第……
文章はひらがな、短文だけど……
内容がとても人を選びます。
日本人形が怖い人や、苦手な人には恐ろしささえ感じる内容でしょう。復刻されるほど望まれた絵本ではありますが、この独特な雰囲気に好き嫌いが分かれそうです。
読み聞かせにはあまり向いていない内容でしょう。