絵本の森

『つばきの花のおよめさん』──椿の花で飾られた花嫁の正体は

あらすじ

椿の花で遊んだおちよは、次の日、晴れているのに雪が降るという不思議な天候に見舞われた。
道の向こうからやってくるのは、花嫁行列だ。

おちよは、落ち葉をかざし、その花嫁行列を見てみた……。

 

繊細にして詩的

詩のような本文と、繊細な筆致で描かれるイラストの絵本。
本文のテンポのよさは、軽妙というより美的。

椿の花が咲き誇る季節の話だ。
椿で遊ぶ子どもたち。
遊んでいると、いろんなところから子どもたちが集まってきて、やんややんやと盛り上がる。
ある子は椿で首飾りを作り、ある子は頭飾りを作る。
知らない子とでも仲良く遊べてしまうのは、子どもの特権かもしれない。

他愛もない風景に、子どもがのびのびと描かれている。自然の中で遊ぶ子どもたちは、心を清涼にしてくれるようだ。

子どもたちはお嫁さんごっこをして、そして帰っていく。

 

次の日、おちよは、おじいさんと一緒に、お日様が照っているのに雪がちらつくという不思議な天候に出くわす。
そして道の先からしずしずとやってくるのは……花嫁行列だ。
不思議な天候の中で見かける花嫁行列は、幻想的な風景だったろう。

 

落ち葉を手にそっとかざしてみてみれば、その花嫁行列はなんときつねの花嫁行列だった。

 

狐の嫁入りの雪バージョンである。
しずしずと通り過ぎる花嫁行列を、おちよはたぶん、あこがれとともに眺めたに違いない。
ふと気づいたのは、昨日遊んだ知らない子たちがきつねだったこと。
おちよはうれしくなって、ただ花嫁行列を眺めている。

 

擬音語が新鮮で、言葉の響きが不思議に響く。
なんとも詩的で美しい文章だろう。
不思議なきつねの嫁入りを彩るにふさわしい文章である。

 

本文は詩的

詩のような本文は声を出して読んでみたくなるよう。
新鮮な言葉の響きに驚かされる。
椿の花と晴れ間の雪、そして花嫁行列と美しい光景が目に浮かぶようだ。
幼児、低学年向け。どちらかというと、お嫁さんにあこがれる女の子向けだろう。