あらすじ
田舎に建てられた、小さな家。
この家をを建てた人は、この家を自慢に思って、代々受け継がれていくだろうと言った。
小さな家は、四季の移り変わりを感じ取っていた。
豊かな自然が、四季の移り変わりを教えてくれたのだ。
しかし、時は過ぎ去り、小さな家の周りにも変化が現れた。
馬車はなくなり自動車が走り、道が出来……
気がつけば、田舎の静けさはなくなり、小さな家は都会の真ん中に取り残されてしまっていた……。
細かな描写で家の運命をつづる、絵本の傑作。
幸せだったちいさなおうちだったが……
昔々に田舎に建てられた小さなおうち。
丈夫に建てられたそのおうちを建てた人はこう言った。
「どんなに たくさんの おかねを くれるといっても、
このいえを うることは できないぞ。わたしたちの まごの
まごの そのまた まごのときまで、
このいえは、きっと りっぱに たっているだろう。」
この言葉が、後々のおうちを縛るものとは思わなかったろう。
田舎に建てられたこの小さなおうちは、四季の移り変わりを体全体で感じながら、あるいは見つめながら、過ごしていた。
田舎の四季ははっきりしている。日の長さ、草花の様子……おうちの毎日は変わらなかったが、季節は確かに巡っていったのであった。
しかし、そんなおうちの毎日も、ちょっとずつ変化が現れる。時の流れとともに、馬車が自動車に代わり、道は平らにならされ、立派な道路かが出来、列車が走り……
ゆっくりと、でも確かに、おうちのおかれた環境は変わっていったのである。静かな田舎から、都会へと。
両隣を高層ビルに囲まれたおうちは、決して幸せそうに見えない。すむ人もいつしかいなくなったそのおうちは、みすぼらしい姿になってもそこに建っていた。
排気ガス、夜になってもぎらぎらと輝く町の灯り。
ちいさないえは、もう四季を感じることができなくなっていた。都会の騒がしさ、うるささに、昔のようなゆったりとした気持ちをなくしてしまったのだ。
見ていると、ちいないえがかわいそうになってくる。
不幸せになってしまったいえを助けたのは、ある家族だった。
その家族は、家を建てた人の子孫だったのだ。
相続はどうなっていたのかとか、都会の真ん中で取り残されてようになっているちいさないえになるまで誰も気づかなかったのかとか、いろいろ疑問はあるのだが、とにかくちいさないえは、取り壊されることなく、そのまま丸ごと、引っ越しすることになった。
町から、再び田舎の静かなところへ。
家は、また四季の流れを感じ、幸せを感じるようになる。すむ人も出来、みすぼらしい格好だった家は見違えるようにきれいになった。
時の流れに取り残されてしまった家。なまじ愛されて建てられた家だから、都会に取り残されることになってしまった。一人で動けない家は、ただ事態を見ていることしかできないのが哀れだ。
ゆったりとした、田舎の暮らし。
家は、心の豊かさを得て、幸せに暮らしている。
都会の便利さと、心の豊かさはイコールではないということを、ちいさないえは教えてくれているのだろう。
時の流れに取り残された家
為すすべもなく、時の流れに取り残されてしまった家。
都会に発展していくことは、必ずしもいいことづくめではないということを教えてくれる。
文章量は多めで、低学年向け。