あらすじ
昔、大きな流れの速い川があった。
橋をかけてもかけても流されてしまう。
困った村人は、このあたりで腕のいい大工に橋をつくってもらうことにした。
大工は引き受けたのはいいものの、果たしてこの流れの速い川に橋がかけられるかどうか、心配になった。
大工が川を眺めていると、川の中から鬼が現れ、鬼は大工の目玉をもらうかわりに橋を作ってやってもいいと取引を持ちかけてきた。
その取引に大工は……。
鬼の名前をあてねば大変なことになる
日本昔話の絵本だ。
昔、あるところに、とても流れの速い大きな川があり、その川に橋をかけようとしてもすぐに流されてしまって、人々は困っていた。
そこで、村の人たちは、このあたりで一番腕がいい大工に頼んで、橋をかけてもらうことにした。
頼まれた大工ははてさて、困る。
ふつうにかけたところで橋は流されてしまうのではないか……そう悩みながら川を見ていると、川から鬼が姿を現した。
鬼は大工になにをしているのかと尋ねてきた。大工は、川に立派な橋をかけたいと思っているところだと正直に話す。すると鬼は、こう持ちかけてくる。
「おまえが いくら じょうずな だいくどんでも、ここへ はしは かけられまい。けれども、おまえのめだま よこしたら、おれが おまえに かわって、その はし かけてやってもええぞ」
鬼の取引なんて、ろくなことがない。こんなものはどう考えても悪魔の取引である。目玉をとられるなんてまっぴらごめんてなところだ。
しかし、大工の反応は信じられないぐらいてきとうである。
「おれは、どうでもよい」
え……なんでそんなに温度の差が……?
目玉がとられるかもしれないのに、なんでそんなどっちつかずの返事ををしてしまうんだ、大工。ノーといえない日本人なのか。
次の日、大工が川に行ってみると、橋が半分かかっているではないか。
こりゃ大変だ。目玉が危ない。「どうでもいい」とかいう曖昧な返事をするからこうなったのだ。
また次の日になると、川には立派な橋ができあがっていた。ますます大工の目玉が危ない。
川から鬼が出てきて、鬼は目玉をよこせと言い出した。まあ当然である。最初から宣言していたのだから。だから曖昧な返事したのがだめだったのでは……。
それに困ったのは大工。目玉はとられたくない。
いやいや目玉は待ってくれと訴えると、鬼は「自分の名前を当てられたら許してやってもいい」という譲歩案を出してくる。鬼、いいやつなのか、ただ遊びたいのかよくわからない。大工の目玉の命は延びたが。
鬼の名前……
鬼の名前なんて難しいよなあ……
まあ、この本のタイトル、『だいくとおにろく』っていうんですけどね。
逃げ出した大工は、山の中で偶然にも子守歌を耳にする。
はやく おにろくぁ めだまぁ
もってこばぁ ええ なあ──
やった! 名前はおにろく!
すごいご都合展開だと思うが、大工はこうして鬼の名前を知るに至ったのである。
次の日、大工は鬼と会い、名前を言い当てた。
鬼は言っていたとおりに大工を許すことになり、いなくなってしまった。言ったことはちゃんと守る律儀な鬼だ。
すべての不運は、子守歌を聞かれたから。鬼の家族の誰かが歌っていたのだろうか。そこは語られるこことはない。
かくして、立派な橋を実質ただでかけられた大工、職人としてラッキーなのかそうでないのかは考えるところだが、鬼が約束を守るタイプでよかったねといった感じである。
大工と鬼の会話のやりとりが楽しい一冊ではあった。
話を楽しむタイプの絵本
文章を読み、ストーリーを楽しむタイプの絵本だ。
渋い絵柄なので、子どもが自分から手に取ることは少ないかもしれないが、話の展開はおもしろい。
幼児、低学年向け。