絵本の森

『かいじゅうたちのいるところ』──最初は自分の寝室からだった。そこから船にのり、怪獣たちのいる島へと……

あらすじ

オオカミのぬいぐるみを着たマックスは、暴れたおかげでお母さんに怒られ、夕食抜きで寝室に放り込まれてしまう。

むくれていたマックスだったが、寝室に木が生えてきて、次第にあたりの様子が変わっていき……。

 

自分の部屋が広がっていって……

映画化もした絵本、『かいじゅうたちのいるところ』。
知っている方も多いことだろう。

 

オオカミのぬいぐるみを着たマックスは、暴れん坊将軍になってしまい、お母さんに怒られた。そして、罰として夕ご飯抜きで部屋に放り込まれた。反省の「は」の字も見えないマックスは、不服そうな顔をしている。

ふーんだ、反省なんかしてないもんねーなマックス。
すると、部屋の中ににょきにょき木が生えてきた。どんどん生えて、天井や壁が消えて、あたりは森や野原に変わってしまう。
マックスは取り乱すことなく、うれしそうにしている。

そこへ、波がざぶんと押し寄せてきて、マックスの船を運んでくる。マックスは、船に乗り込み、航海した。

1しゅうかん すぎ、2しゅうかん すぎ、
ひとつき ふたつき ひが たって、
1ねんと 1にち こうかいすると、
かいじゅうたちの いるところ。

全くずいぶん長い間航海したもんである。
マックスが上陸すると、怪獣たちがやってきて、脅かしてきた。そこでマックスは「怪獣ならしの魔法」を使って、怪獣たちを降伏させた。
すごいぞ、マックス。

そして怪獣たちは、マックスを迎え入れ、マックスを怪獣たちの王にした。マックスの先導のもと、楽しく遊び始める怪獣とマックスたち。
生き生きと遊ぶ姿が、細かな筆致で描かれている。マックスを王とした怪獣たちは楽しそうだ。マックスはちょっと得意そう。

 

しかし……

 

マックスは遊びに飽き、怪獣たちをを夕食抜きで眠らせた。
すると、マックスはふと、寂しくなった。そう、誰かさんにあいたくなったのだ……その誰かさんとは、考えるべくもない。
寂しさを感じていたマックスの鼻先に、遠い遠い世界からおいしそうなにおいがかすめた。マックスは、怪獣たちの王をやめることにする。帰るのだ。遠い遠い世界に。

怪獣たちは、マックスが行ってしまうことをいやがった。しかしマックスの意志は固く、彼はさっさと船に乗り込むと出発した。

そして来たときと同じぐらいの年月をかけて、マックスは帰ってきた。
そう、いつの間にか。
部屋には、おいしそうな夕食がおかれていた。その夕食は、まだ暖かかったのだ。

 

不思議な空想の世界に遊ぶ一冊。

 

世界観を感じさせる絵とともに

空想の世界に奥行きを感じさせる絵本。
空想(あるいは夢)とわかっているのに、怪獣たちのいるところがどこかに存在しているのではないかと思わせてくれるほどの存在感を放っている。
文章もシンプルで、展開もシンプルだが、空想の不思議さを味あわせてくれる、独特な世界観の光る作品。
色味を抑えたイラストは、夜の気配を残していて、どこか心を休ませてくれる。
幼児、低学年向け。