あらすじ
あおくんときいろちゃんはとても仲良し。
あおくんはきいろちゃんと遊ぼうと思い、会いにいきますが、家にはいませんでした。
きいろちゃんを探して、探して……ようやく出会えました。
二人はうれしくて、うれしくて、いつの間にかひとつのみどり色になってしまっていました。
仲良く遊んで、家に帰ったのはいいものの、みどり色になってしまった二人は、両親にあおくんだともきいろちゃんだともわからない様子……。
二人は悲しくなって泣きますが……。
シンプルさが引き出す想像力
ただの単色の絵の具の点が、こんなに表情豊かに見えるのは、思えばすごいことである。
そんなことをしみじみと感じさせてくれるのは、この『あおくんときいろちゃん』。
主人公を含む登場人物たちは、みんな、表紙にあるとおりの絵の具の点なのである。
こんなにシンプルきわまりないのに、読んでいると、喜怒哀楽が伝わってくるのが不思議だ。
人の想像力というのは、あなどれない。
仲のいいあおくんときいろちゃん。
あおくんはきいろちゃんと遊ぼうとするが、きいろちゃんが家にいない。探しに探して、ようやく出会えたとき、うれしくてうれしくて、あおくんときいろちゃんは一つになって、みどりになってしまう。
みどりになったまま、遊ぶ二人。
だけどくたびれてあおくんの家に帰ると、あおくんの両親はみどりのあおくんときいろちゃんを見て、うちの子じゃないよ、と迎え入れてくれない。きいろちゃんの家でも、同じことが起き、二人は行き場をなくしてしまう。
泣き出す、あおくんときいろちゃん。
涙は黄色と青色だ。
泣いて泣いて、みどりのあおくんときいろちゃんは全部涙になってしまう。
しかし、彼らの流した涙から、あおの涙はあおくんに、きいろの涙はきいろちゃんになった。二人は家に帰ると、両親は迎え入れてくれた。
そして、あおくんの両親がきいろちゃんを抱き上げたときに、みどりに色が変わることを知り、それですべての事情を察したのであった。
これだけの話を、絵の具の点から表現しているのである。
彼らは、顔もなければ手足もない。泣いているときでさえ、涙は単色の粒で描かれる。
だがそれがまた、読むものにとって想像力をかきたててくれる。シンプルゆえに、それが、想像力を引き出すのに一役買っているのだろう。
この作品を読む子は、あおくんときいろちゃんの感情に共感し、物語のハッピーエンドにほっと安堵することだろう。それは、感情移入という、人の持つ想像力の発露にほかならない。
シンプルさが持つ力
絵もシンプルだが、文章もシンプル。
想像力を高めてくれるような、不思議な魅力とパワーを持った一冊である。
幼児向け。読み聞かせにも向いている。