あらすじ
三つ目の化け物は、人間を食べようと思っていた。
そこへやってきたのは、一人の娘。
三つ目は、娘を食べようと首をのばした。娘は驚いたが、その首をもっとのばしてみせてほしいと言う。
三つ目は、首がのびる呪文を娘に教えた。
娘は、その呪文を唱えてみた。すると、首はしゅるしゅるとのびて……。
首が伸びていく……
日本昔話風の内容である。
タイトルのとおり、「いぐいぐいぐいぐ」というのが特徴的かつ大事なフレーズとして出てくるのだが、表紙裏一面に、いぐいぐいぐ……とぎっしり書かれているのをみて、まず狂気を感じる。
話の内容は、そこまで狂気に満ちていないのだが、途中の展開にほのかな狂気を感じる。
三つ目の化け物は、人間を食べてやろうと道で人間を待ちかまえていた。すると娘が油一升をさげて、向こうから歩いてきた。
この娘を食べてやろうと、三つ目は首をしゅるうとのばした。
娘は驚き、あわて、こう言った。
「くわれてもいいけんど これ のませっから
その くび もっと のばしてみせてくれや。」
冷静な娘さんである。
三つ目は、娘に言われて、気をよくしたのか、なぜか自分の習性を告白する。
「そんなら みせてやっか。
いぐいぐいぐいぐ ごじゃらば ごじゃれって
はやくちで となえてみろ
この くびは なんぼでも のびていくわい。」
なぜ自分の習性を告白するのか。
娘は、三つ目が言うように、「いぐいぐいぐいぐ ごじゃらば ごじゃれ」と唱え、三つ目の首をしゅるしゅるとのばしてみる。あんまり何度も唱えたせいで、三つ目はいつまで唱えているんだと言うがもう時すでに遅し。
それを聞いた田圃のカエルが「いぐいぐいぐいぐ」……と唱えだしたのである。どういった意図で唱えだしたのかはわからないが、カエルたちが一斉に唱えだしたからさあ大変。
三つ目の首は際限なくのびはじめた。
「いぐいぐいぐいぐ いぐいぐいぐいぐ ごじゃらば ごじゃれ ごじゃらば ごじゃれ」
しゅるしゅるしゅるう しゅるしゅるしゅるしゅるう。
これが繰り返されるのである。うっすら狂気を感じる繰り返しだ。
声に出して読みたい日本語、とか言うレベルをちょっと越えているような気もしなくもない。
どんどんどんどんのびていく首に、三つ目はあわてる。
どうにかしたいがもカエルが大合唱しているのでどうにもできない。
結局、おばあさんが、際限なくのびている三つ目の化け物の首をみて、「こんな長い化け物のふんどしみたことない」といって、鎌でチョッキリ切ってしまった。なぜふんどし……。
そうして化け物は死んだ……ことはなくて、「なんか急に軽くなった気がする」とか言って後ろを見てびっくりするのだ。悠長というかなんというか……痛みは感じないのだろうか……。
そして彼は風に吹かれて、あっちへしゅるしゅる、こっちへしゅるしゅるととばされることになったのである。
その後彼は、どうにも首だけで風にとばされているのも疲れたもんで、土の中にもぐり、いつしかミミズになってしまったとか何とか……。
口に出して読みやすい本文
「いぐいぐいぐいぐ いぐいぐいぐいぐ ごじゃらば ごじゃれ ごじゃらば ごじゃれ」
しゅるしゅるしゅるう しゅるしゅるしゅるしゅるう。
これの繰り返しが何となく怖い本書。だが軽快なリズムで読める本なので、読み聞かせはしやすいかもしれない。
怖い話ではない。
幼児、低学年向け。