あらすじ
とげとげと呼ばれている女の子。
彼女の体にはとげが生えていました。
彼女は、自分がどこで生まれたのか、誰の子どもなのかわかりませんでした。そう、自分の名前すら知らなかったのです。
とげとげは、みんなにいじめられていました。
心ないことばをなげかけられるたび、彼女のとげは長くなっていきました。
居場所のないとげとげは、行く宛もなく歩き出すのでした。
しかし、彼女の目の前に立ちはだかったのは、乱暴者のサル……。
愛のあたたかさを描く
表紙を見る。
トゲの生えた、正体不明の生き物が描かれている。宇宙人?と最初に思った。
残念ながら、この正体は最後まで明らかにされない。
この子はとげとげと呼ばれている。
そして、女の子。
自分が何者なのか、どこからきたのかもわからない。自分の名前も知らないという。
とげとげというのは、みんながそう呼んでいるだけの名前だ。
体からとげが生えているせいで、とげとげはみんなにいじめられていた。
心ない言葉を投げつけられるたび、とげは長くなる。
心の壁や距離が増したということだろう。
とげとげは、ひとりぼっちだった。
聞こえてくる、陰口……。
とげとげがかわいそうでかわいそうで見ていられない。
居場所のないとげとげは、どこに行くあてもなく、歩き出す。
そこへ立ちはだかるのは、サル。
現実的な大きさを超えて描かれるでかいサルは、とげとげの恐怖を表現している。サルは、よそへ行くのなら、おれの挨拶を受けていけ、という。
挨拶というのは、単なる挨拶でないことは確かだ。暴力的な意味での挨拶である。
サルに棒でぼかぼかたたかれるとげとげ。
誰も助けてくれない……それなのに、彼女は助けを求めていた。
誰も助けてくれないのに……
と、そこに飛び出してきたのはヤマアラシ。
彼は針を逆立て、サルを撃退したのだ!
ヤマアラシはトムと名乗った。
そしてトムは、とげとげに親しげに話しかける。おまけにとげとげを「かわいいおじょうさん」と呼ぶのだ。
その後、二人は距離を縮めていく。とげとげの鋭く立ったトゲは、次第に寝かせられるようになり……傷ついていた彼女の心は、トムの暖かさで癒えていくのであった。
これは、愛だろう。
あたたかかな愛が、二人の間に芽生えつつあるのだ。
この絵本は、愛の深さや愛のあたたかさを描いた絵本だった。
とげとげは、ひとりぼっちから伴侶を得るに至った。
彼女がこれから幸せになることを願わずにいられない。
少しずつ、幸せに
愛情を描いた作品。低学年からが対象だろう。
深いテーマなので、伝えることがむずかしい。