あらすじ
ブライアンは目立たない。
目立たなすぎて、先生の目にも入らないこともある。
集団で無視されているわけではない。ただ存在感がなくて、目に入らないのだ。
そんなブライアンの得意なことは、絵を描くこと。
彼は一人で絵を描くことが多かった。
ある日、転校生がやってきた。
それが、ブライアンの転機だったのだ……。
目立たない子、ブライアン
目立たない子、影の薄い子、というのは残念ながらいる。
何かの集団ができると、存在感のない子というのが発生するのだ。残酷であるが、現実である。
子どもに限った話でもない。おとなの集まりだってそうだ。存在感のない人というのはいる。結構、つらい。
ブライアンは、目立たない。
ほかの目立つ子たちの陰に隠れてしまうような、そんな子だ。先生だって、時々、ブライアンが見えなくなるらしい。ひどい話に聞こえるが、わざとではないだけ、始末が悪い。
たいてい目立たない子というのは、目立って悪いことをするわけでもないし、目立って発言するわけでもないから、目立たない子になっているわけで、問題もトラブルも起こさない子、として見られやすい。中には陰でひねくれてしまう子もいるわけだが……、そういう目立たない子まで目を行き届かせることはとても大切なことなのだが、むずかしい。
教室でも目立たないブライアン。別に激しいいじめをうけているわけでもない。ただ存在感が薄いがための、孤独を彼は味わっていた。
彼だけ灰色に塗られた絵を見ると、彼の孤独が目に見えるようで切なくなってくる。
ひとりぼっちの彼の得意なことは、絵をかくこと……。彼は、いつも一人で絵を描いているのだろう。
しかし、転機は訪れた。
転校生のジャスティンである。
彼は、お昼ご飯に、「プルコギ」を食べていた。「プルコギ」をよく知らないみんなは、ジャスティンのお昼ご飯を笑う。
それを見ていたブライアンは、ジャスティンに手紙を書く。得意な絵入りで。「プルコギおいしそうだったよ」と。
それから、ブライアンの環境は変わっていく。
ジャスティンが、ブライアンを認め、心を通わせていくのだ。それをきっかけにして、ブライアンは目に見えない存在から、目に見える存在へと変わっていく。
目に見えない境遇を変えたのは、ブライアンの勇気。
手紙を書いて、道具箱に入れた勇気だ。よくぞ勇気を出したと言ってあげたい。
ブライアンが一歩踏み出したとき、それをジャスティンが受け止めてくれた。認めてくれた。
灰色の彼から、色づいていく彼のなんとうれしそうなことか。
ブライアンはもう目に見えない男の子ではない。
絵のうまい、心の優しい男の子だ。
それは後ろの見返しを見ればわかる。
ブライアンという存在が、みんなの目に見えると言うことが。
一歩勇気を持って踏み出して、自分という存在を認めてもらえたブライアン。
存在感が薄いことは、ブライアンのせいでも周りのせいでもないのだが、彼は優しい手紙を出すことで、自分の存在を発信することに成功したのだ。
文章の量はふつう
文章の量はそんなに多くないのだが、本のサイズのわりに字が小さい。複数に向けての読み聞かせの場合はちょっと難儀するかもしれない。
読後は優しい気持ちになれる絵本だろう。
低学年向け。