あらすじ
はらぺこオオカミが、ある井戸をのぞくと、黄色いまん丸なチーズがあるのに気がつきました。
オオカミは手を伸ばして、そのチーズをとろうとしましたが……ポチャンと井戸に落ちてしまいました。
井戸の中には、チーズなどありません。
チーズは、水面に映ったお月様だったのです。
井戸に落ちたオオカミ。
出ることもかないません。
そこへやってきたのは、ブタ。
ブタは、井戸の中のオオカミを見つけ、なにをしているのか、声をかけます。
そこでオオカミは……。
井戸をめぐる様々な思惑
長細い本を縦使いにした、縦に長い絵本。
迫力がある。
話のメインは井戸に落ちることにあるので、この縦長の画面はぴったりだろう。
ある日、おなかをすかせたはらぺこオオカミ、井戸の底に黄色くてまん丸のチーズがあるのを見つける。
井戸の底に、という時点でイヤな予感しかしないのだが、その予感は的中する。
チーズを拾おうと身を乗り出したオオカミは、見事井戸の中にポッチャーンと落ちてしまう。
しかもそのチーズは、水面に映ったお月様だったのだ。チーズなんてどこにもない。
うん、そうだと思ってた。
チーズはないわ、井戸の上から桶が落ちてきて頭に直撃するわ、さんざんなオオカミ。さらには、井戸から出られないときた。最悪である。
そこへやってきたのはブタ。
オオカミに声をかけてくる。
オオカミは、ここで、素直に出られなくなったから助けてくれと言えばいいのに、なぜかこう言う。
「(井戸の中で)すずんでいるのさ。ここは いいぜ! くうきは うまいし、なにより チーズが やまほどある。たべきれないほど でっかいやつがな!」
だからおまえも来いよ、とオオカミはブタに言うのだ。
オオカミはなんやかやでうまく言って、ブタを井戸の中に誘い込むことに成功する。
井戸なので、片方のロープに伝って降りてくるようにいい、自分は桶に捕まって地上へ……。
やったー地上脱出成功!
だまされたとブタが知ったのは、井戸の底に落ちてから。
悔しがってももうオオカミはいない。
ブタが悔しがっていると、ウサギの一家がやってくる。
ウサギはブタに、そんなところでなにをしているのかと尋ねる。
このとき、ブタはふつうに「助けてくれ」とお願いすればよかったのに、なぜかこんなふうに言う。
「ちょっと ひとおよぎしているのさ。
いやあ、いいきもちだ。
だけど、にんじんが ゴロゴロしているのが
たまにきずでね。
からだに あたって いたいんだ」
そうしてうまいこと言って、ブタはウサギの一家を井戸の底に誘い込むのだが、なぜそんなことをしたのか謎すぎる……。
ふつうに助けてと言えばよかったのでは……?
なぜ……?
ブタ、性格悪いのか……?
ウサギ一家がロープを伝って降りてくると同時に、ブタは反対側のロープにつかまり、地上に脱出する。
だまされたと気づいたウサギ、もう遅い。
井戸を出ようにも、出られない。
そこへやってきたのは……
さっきのはらぺこオオカミ!
井戸に落ちたウサギ一家を見て笑う。オオカミも例外なく性格が悪い。
オオカミは一度この井戸に落ちてなにもないことをしっているはず。
だから、今までのような脱出法を試すこともできないはず……。
しかし、ウサギはこう言うのだ。
「(前略)ここは ウサギのいどだから。
いるのは、まるまるふとった
ウサギだけさ!」
それを聞いたオオカミ……
なにもかも忘れて、井戸のロープに飛びついた。
そして、井戸の中に再びポッチャーン!
ああ……
このオオカミ、ちょっと間抜けなんだ……。
そうしてオオカミは、井戸の底。
落ちてきた桶が頭に当たって痛いわ、悔しいわ……。
それでこのお話はおしまい。
……どうやってオオカミは井戸から出るんだろう……。
オオカミいいとこなしだが、なにより性格の悪いブタも絵本界では珍しい。
話はおもしろいが
話はおもしろいが、文章量がやや多め。
読み方によっては幼児も楽しめそうだが、意外と話が長い。
低学年が主な対象だろう。
読み聞かせも盛り上がりそうである。