絵本の森

『あけるな』──あけるなって言っているのに

「これが あけずに いられるかい」

開けるなと言われれば、開けたくなるのが人のサガというもの。
あなたもきっと開けずにいられない。

 

開けるなと書かれた板が打ち付けられた扉を前に

やるなといわれればやりたくなる。見るなといわれれば、見たくなる。
開けるなといわれれば……?

開けるよね。開けたくなるよね。

この本の表紙を見たとき、開けずにはいられない気持ちになる。
誘惑に負けてページを開くと、また扉があって、「あけるなったら」とあくまでも開けるな開けるなと繰り返し訴えてくるのだ。
開けるなと言われれば言われるほど、開けたくなる、ページをめくりたくなる……一度禁を破ってしまえば後は転がり落ちるように勢いづく。
調子に乗って次々と先に進むと──

 

たどり着いたのは、見知らぬ風景。

 

森。城塞。背中を向けて椅子に座る人、転がったビー玉。
関連性すら見いだせない風景が続く。
詳しい説明などもなく、淡々と展開していく世界に不安感が募っていくばかりだ。何を意味しているのか、何を語りかけているのか。はっきりとした言葉も説明もない。ただそこに描かれているだけの奇妙な風景。

そんな中で、見覚えのある扉が──
ああ、あれは──

 

開けるなといっているのに

前半のページをめくる早さと、後半のページをめくる早さはおそらく半減していることだろう。不可解で不思議な、そこはかとなく怖い雰囲気が魅力の本。
すべて読んだ後、これはどういった物語なのか、首をかしげる人も多いだろう。

この本に、子どもの成長を見る人もいるかもしれないし、エンディングでひときわ恐ろしさを感じる人もいるだろう。
文字数も少なく、目をひくタイトルなので大抵、子どももひきつけられると思う

しかし、読了後、腑に落ちない顔をする子やおとなも多いはず。
結末は、読み手に任せます、という意味なのだろうか──「あけるな」といっているのに開けてしまったので。